| 地獄楽 Hell's Paradise: Jigokuraku | |
|---|---|
|
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/0/05/La_expedici%C3%B3n_de_Xu_Fu%2C_por_Utagawa_Kuniyoshi.jpg?utm_source=commons.wikimedia.org&utm_campaign=imageinfo&utm_content=original 歌川国芳が描いた「徐福」の浮世絵。不老不死の仙薬を求めて海を渡ったという伝説の方士・徐福は、本作の島の謎にも深く関わる(出典:Wikimedia Commons・パブリックドメイン) | |
|
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/0/0b/Hanamori_Yumiri_%22Garakowa_-Restore_The_World-%22_at_Opening_Ceremony_of_the_28th_Tokyo_International_Film_Festival_%2822414814662%29.jpg?utm_source=commons.wikimedia.org&utm_campaign=imageinfo&utm_content=original アニメで山田浅ェ門佐切を演じた花守ゆみり(2015年撮影。出典:Wikimedia Commons・撮影 Dick Thomas Johnson・CC BY 2.0) | |
| 作家 | 賀来ゆうじ |
| ジャンル | アクション、時代劇、ダークファンタジー |
| 出版社 | 集英社 |
| 配信 | 少年ジャンプ+ |
| 連載期間 | 2018年1月22日 - 2021年1月25日 |
| 連載周期 | 週刊(毎週月曜更新) |
| 話数 | 全127話(単行本全13巻) |
| 略称 | 地獄楽 |
| メディアミックス | テレビアニメ(第1期2023年・第2期2026年、全25話)、舞台(2023年・2024年)、ゲーム『地獄楽 パラダイスバトル』、小説、スピンオフ漫画 |
| リンク | アニメ公式サイト |
概要[編集]
地獄楽(じごくらく)とは、賀来ゆうじによる日本の漫画作品である。集英社のマンガアプリ「少年ジャンプ+」で2018年1月から2021年1月まで連載された、江戸時代末期を舞台にした忍法×剣戟×サバイバルの時代劇アクション。単行本は全13巻で、MAPPA制作のテレビアニメが2023年に第1期、2026年に第2期として放送された。
詳細[編集]
「死罪人×処刑人」という発明[編集]
本作の出発点は「処刑人と死罪人が閉鎖空間にいる」というワンアイデアだったとされる。ただ、そのままだと設定説明ばかりの漫画になりそうだったため、作者の賀来ゆうじはまずキャラクターを作り込み、そのあとで物語とすり合わせるという手順で作品を組み上げた。結果として生まれたのが、「無罪放免」を賭けて仙薬を探す死罪人と、その監視役である打ち首執行人がコンビを組むという、ありそうでなかった構図である。
殺す側と殺される側が同じ方向を向いて歩くという緊張感は、そのまま作品全体のテーマにつながっている。生きたいのか死にたいのか、人を斬ることは正しいのか。極楽浄土のように美しい島で、全員がその答えを突きつけられていく。
ジャンプ+の看板へ[編集]
連載は2018年1月22日に少年ジャンプ+でスタートし、毎週月曜に更新された。開始から半年あまりの2018年8月にはジャンプ+の人気No.1作品となり、2020年7月以降は同アプリで最も総閲覧数が多い作品になったとされる。2019年には集英社が全社を挙げて推す「PUSH3作品」に、『呪術廻戦』『アクタージュ act-age』とともに選ばれた。
読者層も男女に偏りがなく、『呪術廻戦』『鬼滅の刃』『約束のネバーランド』といったダークな世界観の作品と併読される傾向があったという。紙の雑誌ではなくアプリ発の作品がここまで大きく育った例として、後輩の『SPY×FAMILY』や『チェンソーマン』第2部と並ぶ「ジャンプ+黄金期」の土台を作った一本と言える。
3年で完結した全13巻[編集]
連載は2021年1月25日に最終回を迎え、全127話で完結した。単行本は第1巻が2018年4月4日、最終13巻が2021年4月30日に発売されている。ダラダラと引き延ばさず、島の謎・天仙との決戦・それぞれの生き様にきっちり決着をつけた構成は、完結後も「一気読みに最適な長さ」として評価が高い。累計発行部数は2024年12月時点で650万部を超えており、アニメ化をきっかけに完結後も読者を増やし続けている。
あらすじ[編集]
※ここでは序盤の設定を中心に紹介する。結末に関わる内容は「よくある質問」を参照。
時は江戸時代末期。かつて「石隠れ衆」最強の忍として恐れられた画眉丸は、里を抜けようとして捕らえられ、死罪人として獄中にいた。ところが彼の体はあまりにも頑丈で、どんな処刑法を試しても死なない。何度処刑されても死なない画眉丸の前に現れたのが、打ち首執行人の一族「山田浅ェ門」の女剣士・山田浅ェ門佐切だった。
佐切は画眉丸に、ある取引を持ちかける。琉球のさらに南の海に浮かぶ、極楽浄土とうわさされる島「神仙郷」。そこから「不老不死の仙薬」を持ち帰れば、幕府は罪を赦して無罪放免にするという。実は画眉丸が死ねなかった理由は、里に残してきた愛する妻・結の存在だった。妻のもとへ帰るため、画眉丸は仙薬探しを引き受ける。
島に送り込まれたのは、画眉丸を含む10人の死罪人と、その監視役である山田浅ェ門の執行人たち。しかし極彩色の花が咲き乱れる島には、異形の化物と、人の姿をした謎の存在「天仙」が待ち受けていた。仙薬を手にできるのはただ一人。死罪人同士の殺し合い、執行人との駆け引き、そして島そのものが持つ恐るべき秘密に、画眉丸と佐切は巻き込まれていく。
主な登場人物[編集]
声はテレビアニメ版のキャスト。
主人公コンビ[編集]
- 画眉丸(がらんどうの画眉丸/声:小林千晃)
- 本作の主人公。16歳、身長150cm、白髪の元・石隠れ衆の忍。「画眉丸」は里の筆頭を示す屋号で、本名ではない。感情のない「がらんどう」を自称し虚無的にふるまうが、実は妻の結に対する思いは誰よりも重く、粘着気質なところもある。島では「火」の性質を持つタオを操り、忍法「火法師」で戦う。
- 山田浅ェ門佐切(声:花守ゆみり)
- 17歳、身長172cm。打ち首執行人一門・山田家の試一刀流十二位。女であることから一門の中で冷遇されがちで、人を斬ることへの迷いを抱えている。画眉丸の監視役として島に渡り、戦いのなかで「自分の強さも弱さも受け入れる」境地へとたどり着く。迷いが消えたときの剣の冴えは一門でも一目置かれるほど。
死罪人[編集]
- 杠(ゆずりは/声:高橋李依)
- 「傾主の杠」の異名を持つ甲斐忍者のくのいち。奔放で自分勝手、平気で人を利用するトリックスターだが、その根っこには亡き妹の分まで生きるという強い思いがある。
- 亜左弔兵衛(あざ ちょうべえ/声:木村良平)
- 「賊王」と呼ばれる伊予の盗賊団の頭目。もとは武家の出で、藩の改易や父の刑死を経て盗賊になった。分析力と人心掌握にすぐれ、何よりも弟・桐馬を優先する。
- 民谷巌鉄斎(声:稲田徹)
- 「剣龍」「八州無双」とたたえられた伝説の剣豪。藩主の屋敷に掲げられた龍の扁額を一刀両断して死罪になったという、とにかく豪快な人物。
- ヌルガイ(声:小市眞琴)
- 山の民「サンカ」の末裔。少年に見えるが実は少女。侍を助けたことがきっかけで集落が滅ぼされ、罪悪感から自暴自棄になっていた。
- 陸郎太(声:田所陽向)
- 備前の大巨人。圧倒的な怪力の持ち主。
- そのほか「人喰い花魁」あか絹や、新興宗教の元教祖・茂籠牧耶らも死罪人として島に送り込まれている。
山田浅ェ門[編集]
- 山田浅ェ門士遠(声:小林親弘)
- 試一刀流四位。生まれつき盲目だが、物の「氣」を読むことで見える者以上に動ける。冷静沈着で、なぜか「目」にまつわるジョークが持ちネタ。
- 山田浅ェ門付知(声:市川蒼)
- 試一刀流九位。解剖道具を常に持ち歩き、島の生き物を片っ端から解剖したがるマッドサイエンティスト気質。
- 山田浅ェ門桐馬(声:小野賢章)
- 弔兵衛の実弟。兄を守るために入門し、わずか1か月で代行免許を得た天才剣士。
- 山田浅ェ門仙汰(声:山下大輝)/山田浅ェ門典坐(声:小林裕介)
- それぞれ杠、ヌルガイの監視役。
- 山田浅ェ門殊現
- 試一刀流二位。一門随一のカリスマで、他人の剣技を見ただけで再現してしまう天才。第2期から本格的に登場する追加上陸組の中心人物。
その他[編集]
- 結(声:能登麻美子)
- 画眉丸の妻で、石隠れ衆の里長の娘。朗らかで優しい女性。がらんどうだった画眉丸に「普通」の幸せを教えた人物であり、彼が生きて帰ろうとする唯一の理由。
- 天仙
- 島を支配する人ならざる存在。リーダーの蓮(リエン)をはじめ、菊花、桃花、牡丹、朱槿、蘭、桂花らがいる。性別を自在に変え、人間を「丹」の材料として扱う。アニメでは諏訪部順一、甲斐田裕子らが演じ、幼い姿のメイを小原好美が担当した。
- 徳川斉慶(声:茶風林)
- 不老不死を求めて死罪人たちを島へ送り込んだ将軍。
島と世界観[編集]
神仙郷[編集]
島は琉球近くの南の海にあり、外側から「瀛州(えいしゅう)」「方丈」「蓬萊」という同心円状の3エリアで構成されている。極楽浄土を思わせる美しい花畑と仏像風の化物が同居する異様な景観は、本作のビジュアル面の最大の魅力のひとつ。物語が進むにつれ、この島がかつて仙薬を求めた方士・徐福と深く関わる「実験場」であることが明らかになっていく。
タオ(氣)[編集]
島で戦うために欠かせないのが「タオ(氣)」という概念である。この世の万物に宿る生命の力で、木・火・土・金・水の五行の属性があり、相性によって有利不利が決まる。天仙たちはこのタオを操り、強大な再生力を持つため、普通に斬っても倒せない。画眉丸たちは敵同士だった死罪人と執行人で知識を共有し、タオの仕組みを読み解きながら活路を見いだしていく。中盤以降は「誰と誰が組むか」が戦いの鍵になり、能力バトルとしての面白さが一気に加速する。
丹と仙薬[編集]
天仙が生きるために必要とするのが「丹」と呼ばれる仙薬で、その原料には人間や島の住人が使われている。「不老不死の仙薬」という甘い言葉の裏側にある正体こそが、本作が最も残酷で、同時に哲学的な問いを投げかける部分である。
作者・賀来ゆうじ[編集]
作者の賀来ゆうじは、2009年に読み切り『Memory Customs』がジャンプSQ.の新人漫画賞で佳作に選ばれ、キャリアをスタートさせた漫画家。2013年から2014年にかけて『ジャンプSQ.』で『FANTASMA』を連載したが、人気は伸びなかった。その後は藤本タツキの『ファイアパンチ』でアシスタントを務めており、アシスタント期間と『地獄楽』の準備期間は大部分が重なっていたという。
『FANTASMA』での反省から「自分の好きなほうに振ってみた」結果として生まれたのが本作である。賀来は北斗の拳、グラップラー刃牙、ベルセルク、寄生獣などから影響を受けたと語っている。連載準備中には親戚の殺陣師から刀の扱いについてレクチャーを受け、刀を使う物語で痛みや残酷さを描く必然性を学んだ。
絵柄については、担当編集者の助言で小池一夫原作の劇画『首斬り朝』などを研究したほか、フランスの漫画「バンド・デシネ」も参考にしたとされる。ネームは「エピソード全体の流れ→印象的なシーン→キャラクターに言ってほしいセリフ」の順で作っていたという。
『地獄楽』完結後は、2021年から2022年にかけて『週刊少年ジャンプ』で任侠アクション『アヤシモン』を連載した。X(旧Twitter)のアカウントは「@ug_kaku」。
アニメ[編集]
第1期(2023年)[編集]
テレビアニメ第1期は2023年4月1日から7月1日まで、テレビ東京系列ほかで毎週土曜23時に放送された(全13話)。アニメーション制作は『呪術廻戦』『チェンソーマン』でも知られるMAPPA。監督は牧田佳織、シリーズ構成・脚本は金田一明、キャラクターデザインは久木晃嗣、音楽は出羽良彰が担当した。
オープニングテーマは millennium parade × 椎名林檎 の「W●RK」、エンディングテーマは Uru の「紙一重」。配信はPrime Video、Netflix、Leminoなどで行われ、海外ではCrunchyrollでも配信された。
第2期(2026年)[編集]
第2期の制作は、2024年12月21日のジャンプフェスタ2025「少年ジャンプ+10周年ステージ」で発表された。放送は2026年1月11日から、テレビ東京系列で毎週日曜23時45分に始まり、Prime Video、Netflix、Leminoでは同日深夜0時15分から配信された。第1期から約3年ぶりの続編で、スタッフは監督の牧田佳織、シリーズ構成の金田一明、キャラクターデザインの久木晃嗣らが続投。
オープニングテーマはキタニタツヤ feat. BABYMETAL の「かすかなはな」、エンディングテーマは女王蜂の書き下ろし曲「PERSONAL」。女王蜂のアヴちゃんは、心身ともに限界のなかで戦いに向かうキャラクターたちを包み込むような「子守唄」を書いたとコメントしている。
物語は一行が天仙の住む「蓬萊」に迫る後半戦に突入し、幕府から殊現ら追加の山田浅ェ門が島に上陸する。牧田監督は「これまでタッグを組んでいないキャラクター同士」の関係の変化を見どころに挙げ、佐切の痛みを丁寧に描いた話数について「女性として共感できる部分もあった」と語っている。2026年3月に第25話(第2期第12話)で最終回を迎え、アニメは全25話となった。放送期間中は毎話の放送後に、ミニキャラによるミニアニメ「ちょびっと!じごくらく」もSNSで配信された。
メディア展開[編集]
舞台[編集]
舞台版は2023年2月にヒューリックホール東京で初演され、2024年2月にはシアター1010とCOOL JAPAN PARK OSAKA TTホールで続編が上演された。画眉丸役は木津つばさ、佐切役は白本彩奈が務めた。
ゲーム[編集]
初のオリジナルゲーム『地獄楽 パラダイスバトル』(通称パラバト)は、グッドスマイルカンパニーが手がける基本無料のサバイバルRPGで、2025年11月にiOS・Android・Windows向けに配信された。アニメのシリーズ構成・金田一明が監修したオリジナルストーリーをフルボイスで楽しめる。
書籍[編集]
本編のほか、ギャグスピンオフ『じごくらく〜最強の抜け忍 がまんの画眉丸〜』(作画:おおはし)、菱川さかくによる小説『地獄楽 うたかたの夢』、設定資料集『地獄楽 解体新書』などが刊行されている。
反響・評価[編集]
2018年の「次にくるマンガ大賞」Webマンガ部門にランクインし、「マンガ新聞大賞2018」にも名を連ねた。『このマンガがすごい!2019』オトコ編でもランクインしている。ウェブ連載作品としては異例のスピードで人気を獲得し、アプリ発作品の可能性を示した一本として語られることが多い。
アニメ化で海外人気も一気に拡大した。英題は『Hell's Paradise』で、Crunchyroll Anime Awards 2024では最優秀新シリーズ賞やキャラクターデザイン賞、美術賞、オープニングテーマ賞など複数部門にノミネートされた。公式X(@jplus_jigokurak)は2018年1月の連載開始と同時に開設され、2026年10月時点でフォロワー約25.8万人。英語版アカウント(@HellsParadiseEN)も運営されており、海外ファンに向けた発信も行われている。
第2期の直前には、少年ジャンプ+で原作全話が期間限定で無料公開され、第1期もYouTubeとTVerで期間限定無料配信されるなど、新規ファンを取り込む施策も展開された。
余談[編集]
- 「山田浅ェ門」のモデルは、江戸時代に実在した刀剣の試し斬りと斬首を担った「山田浅右衛門」家。作中では一門が「試一刀流」の序列で描かれている。
- 将軍「徳川斉慶」の声を担当した茶風林は、『名探偵コナン』の目暮警部などで知られるベテラン。
- 第2期OPでは、シンガーソングライターのキタニタツヤとメタルダンスユニットBABYMETALという、ジャンルをまたいだコラボが実現した。
- 作者がアシスタントを務めた『ファイアパンチ』も少年ジャンプ+の連載作品で、師弟がそろって同じアプリから人気作を送り出した形になる。
- グッズ展開は幅広く、画眉丸と佐切をモチーフにしたワイヤレスイヤホン(キャラクターボイス入り)まで発売された。