シティーハンター

概要[編集]

『シティーハンター』は、北条司による日本の漫画、およびそれを原作とするアニメ・映画作品群。1985年から1991年にかけて週刊少年ジャンプで連載され、東京・新宿を舞台に活躍する凄腕の始末屋(スイーパー)・冴羽獠(さえば りょう)の活躍を描いた、ハードボイルドとコメディが絶妙に融合した名作である。 単行本は全35巻、累計発行部数は5000万部を超え、80年代後半のジャンプを代表する人気作のひとつに数えられる。銃撃戦やシリアスな人間ドラマといったハードボイルドな側面と、美女を前にすると鼻の下を伸ばして「もっこり」と暴走する獠のコメディな側面のギャップこそが、本作最大の魅力だとされる。 アニメ版の主題歌「Get Wild」(TM NETWORK)は、エンディングで戦いの余韻とともに流れる演出があまりに印象的で、いまや「作業を締めるときに流す曲」としてネットで定番ネタ化するほど世代を超えて愛されている。連載終了から長い年月を経てもなお、新作映画が作られ続ける息の長いフランチャイズである。

あらすじ[編集]

東京・新宿を拠点に活動する「シティーハンター」こと冴羽獠は、ボディガード・始末屋・探偵などあらゆる「世直し」を請け負う凄腕のスイーパーである。依頼の受付は新宿駅東口の伝言板に「XYZ」と書くこと。これが彼に仕事を依頼する唯一の方法だとか。 獠は超一流の射撃の腕と格闘技術を持ち、どんな悪党も確実に仕留めるプロフェッショナルでありながら、美女に目がない徹底した女好きという二面性を持つ。相棒の槇村秀幸を事件で失った後、その妹・槇村香が新たな相棒(パートナー)として獠を支えることになる。 香は、女好きで暴走しがちな獠を巨大なハンマー「100tハンマー」で制裁する、本作のツッコミ役にしてヒロインである。二人の間に芽生えていく、口では言い表せない深い信頼と情愛が、コメディの合間にしっとりと描かれていくのが本作の真骨頂だ。新宿の街を舞台に、依頼人たちの抱える事情と、獠の過去にまつわる重厚なエピソードが交錯していく。

主要登場人物[編集]

主人公の冴羽獠は、新宿を拠点とする凄腕のスイーパー。射撃の名手で「百発百中」を誇り、依頼があればどんな危険な仕事もこなすプロフェッショナルである。その一方で、美女を見ると鼻の下を伸ばして暴走する重度の女好きでもあり、このギャップが彼の最大のチャームポイントとなっている。クールな殺し屋とお調子者という二面性を一人で体現する、稀有な主人公だ。 槇村香は、獠の亡き相棒・秀幸の妹で、兄の死後に獠の新たなパートナーとなった少女。明るく気が強く、獠の暴走を100tハンマーで叩いて鎮める名コンビぶりで読者を笑わせる。同時に、獠への想いを抱えながらも素直になれない健気なヒロインとしても描かれる。 海坊主(伊集院隼人)は、かつて傭兵だった巨漢で、現在は喫茶店を営みながら獠のよき相棒・好敵手として登場する。盲目の恋人・美樹とのエピソードも人気だ。そのほか、女刑事の野上冴子など、新宿を彩る個性的なキャラクターが多数登場する。

作風とハードボイルド[編集]

本作の最大の特徴は、ハードボイルドなアクションとコメディの絶妙なバランスにある。冷酷なプロの殺し屋としての顔と、美女の前で締まりなく暴走する三枚目の顔。この振れ幅の大きさが、読者を飽きさせない緩急を生み出している。命を懸けた銃撃戦の緊張感のすぐ隣に、香のハンマーが炸裂する笑いが配置される構成は、後の多くの作品に影響を与えた。 作者・北条司の描く都会的で洗練された絵柄も大きな魅力である。新宿という実在の街をリアルに描き込み、そこに生きる人々の哀歓を丁寧にすくい上げる手腕は高く評価されている。依頼人たちが抱える事情はときに切なく、ときに重く、単なるアクション漫画にとどまらない人間ドラマとしての厚みを本作に与えている。 また、銃器やアクションの描写も非常にリアルで、獠が愛用するコルト・パイソン357マグナムをはじめ、実在の銃器が緻密に描かれる。ガンアクション漫画の金字塔としても、本作はたびたび名前が挙がる存在である。

アニメと映画[編集]

テレビアニメは1987年から放送が始まり、シリーズ化されて長く愛された。神谷明が演じる冴羽獠の軽妙かつ渋い演技は、キャラクターの魅力を決定づけたと言われる。そして何より、エンディングテーマ「Get Wild」(TM NETWORK)の演出が伝説的である。物語のクライマックスからシームレスに楽曲が流れ出す構成は、視聴者に強烈な余韻を残し、いまなおネット上で「Get Wild退勤」などの形でネタにされ続けている。 劇場版やテレビスペシャルも多数制作され、2019年には完全新作の劇場版アニメ『劇場版シティーハンター 新宿プライベート・アイズ』が公開され大ヒット。往年のファンを再び劇場に呼び戻した。2023年にはNetflixで実写映画版が配信され、鈴木亮平が冴羽獠を熱演。原作の「もっこり」要素まで再現した振り切った作りが国内外で高く評価され、世界的にも話題を呼んだ。 フランスでも本作は『Nicky Larson』の名で国民的人気を誇り、現地で実写映画が作られるほど。世代と国境を超えて愛され続ける、息の長い人気シリーズである。

炎上とバズ[編集]

  • 「Get Wild退勤」のネタ化:エンディングでの楽曲挿入演出があまりに有名で、SNSでは仕事や作業を切り上げる際に「Get Wild流して退勤」と投稿するのが定番ネタに。世代を超えてバズり続けている。
  • 実写映画の振り切り:2023年のNetflix実写版は、原作の「もっこり」ギャグをどう実写で表現するかが公開前から話題に。結果として原作リスペクトに満ちた作りが絶賛され、賛否を超えた高評価を獲得した。
  • ヒロイン論争:獠と香の「言葉にしない関係」の決着をめぐっては、ファンの間で長年にわたり議論が続いている。続編『エンジェル・ハート』での扱いも含め、いまも語り草である。
  • 新宿の聖地化:作中に登場する新宿駅東口の伝言板など、実在のスポットがファンの聖地となった。街の描写のリアルさが、聖地巡礼文化の一翼を担っている。

余談[編集]

  • 依頼の合図「XYZ」は「もう後がない(アルファベットの最後)」という意味が込められているという説があり、ファンの間で語り草になっている。
  • 香の「100tハンマー」は物理的にありえない重さだが、獠の悪行への制裁として炸裂するたびに読者の笑いを誘う、本作を象徴する名物アイテムである。
  • 作者・北条司は『キャッツ♥アイ』でも知られるヒットメーカーで、洗練された都会的な絵柄は両作に共通している。
  • 獠の声を演じた神谷明は、キン肉マンのキン肉スグルなど数々の主役を演じた名優で、シティーハンターの獠は当たり役のひとつとされる。
  • 続編『エンジェル・ハート』では、獠と香のその後を描くパラレルな物語が展開され、こちらも人気を博した。
  • フランスでの人気は凄まじく、現地版タイトル『Nicky Larson』として国民的知名度を誇るらしい。

新宿という舞台[編集]

本作を語るうえで欠かせないのが、物語の舞台である東京・新宿の存在感である。歌舞伎町をはじめとする新宿の雑多で猥雑な街並みは、依頼人たちが抱えるさまざまな事情の背景として効果的に機能している。きらびやかなネオンの裏に潜む裏社会、そこで生きる人々の哀歓を、北条司は写実的な筆致で丁寧に描き込んだ。 冴羽獠が新宿駅東口の伝言板に書かれた「XYZ」の文字を頼りに依頼を受けるという設定は、携帯電話もインターネットもなかった時代ならではのもので、いまとなっては逆に新鮮なレトロ感を醸し出している。街の喧騒のなかを獠が駆け抜け、ビルの谷間で銃撃戦を繰り広げる──そんな都会的でスタイリッシュなアクションは、本作の大きな魅力のひとつだった。 また、新宿という街そのものが、獠という男のキャラクターと不思議とマッチしている。表の顔と裏の顔を併せ持ち、優しさと非情さが同居する獠の二面性は、清濁併せ呑む新宿の街の空気と重なり合う。舞台設定とキャラクター造形が一体となって作品世界を支えている点が、本作の完成度の高さを物語っている。

作品の評価と影響[編集]

『シティーハンター』は、ハードボイルドなガンアクションとコメディを高い次元で融合させた点で、後続作品に多大な影響を与えた金字塔的作品として評価されている。シリアスな戦闘の緊張感と、ヒロインによるツッコミの笑いを巧みに織り交ぜる手法は、その後の数多くのアクション漫画・アニメの定番フォーマットとなった。 主人公・冴羽獠のキャラクター造形も画期的だった。腕利きのプロでありながら、女好きで三枚目という親しみやすさを併せ持つヒーロー像は、それまでの寡黙でストイックな主人公とは一線を画すものだった。完璧すぎないからこそ愛される──そんな新しいヒーロー像を提示した功績は大きい。 さらに本作は、海外での人気も特筆に値する。とりわけフランスでは『Nicky Larson』のタイトルで国民的な人気を博し、実写映画が制作されるほどの社会現象となった。アジア圏でも香港映画として実写化されるなど、国境を越えて愛される稀有な作品である。連載終了から長い年月を経てもなお新作映画が作られ続け、エンディング曲「Get Wild」とともに、世代を超えて記憶され続ける不朽の名作となっている。

主題歌とTM NETWORK[編集]

本作を語るうえで欠かせないのが、アニメを彩った数々の主題歌である。中でもTM NETWORKによるエンディングテーマ「Get Wild」は、作品の枠を超えて日本のポップス史に残る名曲となった。物語のクライマックスからシームレスに楽曲のイントロが流れ出し、冴羽獠が新宿の街を去っていく後ろ姿に重なる演出は、視聴者に強烈な余韻を残した。この「本編からEDへの流れ込み」は、当時のアニメ演出としては極めて斬新で、いまも語り継がれる伝説的な手法である。 「Get Wild」はその後も世代を超えて愛され続け、ネット上では作業や仕事を切り上げる際に「Get Wild流して退勤」と投稿するのが定番ネタとして定着した。発売から長い年月を経てもカラオケで歌われ、CMやテレビ番組でも繰り返し使用されるなど、その人気は衰えを知らない。アニメと楽曲が一体となって相乗効果を生んだ稀有な成功例として、たびたび研究の対象にもなっているらしい。 こうした音楽面での完成度の高さも、『シティーハンター』が単なる人気漫画にとどまらず、時代を象徴するカルチャーへと昇華した大きな要因のひとつだと言えるだろう。

作者・北条司[編集]

作者の北条司は、本作のほかにも『キャッツ♥アイ』『エンジェル・ハート』などのヒット作で知られる、1980年代から活躍する人気漫画家である。洗練された都会的な絵柄、魅力的な女性キャラクターの描写、そしてハードボイルドとコメディを両立させる卓越したバランス感覚は、北条作品に共通する大きな持ち味だ。 『シティーハンター』の正統続編にあたる『エンジェル・ハート』では、冴羽獠と槇村香のその後を軸にしたパラレルな物語が展開され、こちらも長期連載のヒット作となった。冴羽獠というキャラクターは、北条司のライフワークとも言える存在であり、世代を超えて描き継がれている。連載開始から長い年月を経てもなお、新宿のスイーパー・冴羽獠の活躍は、多くのファンの心をつかみ続けているのである。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]