キン肉マン

概要[編集]

『キン肉マン』は、ゆでたまご(嶋田隆司・中井義則の漫画家コンビ)による日本のギャグ・バトル漫画。1979年から1987年にかけて週刊少年ジャンプで連載され、ダメ超人のヒーロー・キン肉スグルが数々の超人バトルを勝ち抜いて成長していく姿を描いた、80年代を代表する国民的作品である。 当初は「ウルトラマンのパロディ」のようなギャグ漫画として始まったが、読者投稿による「オリジナル超人」を作中に登場させる企画が大ヒットし、次第に本格的な格闘バトル路線へと進化していった。プロレス技をベースにした熱い試合描写と、個性的すぎる超人たちのキャラクター性で、子どもから大人まで幅広い人気を獲得したらしい。 超人たちの強さを表す「超人強度(パワー)」という数値設定や、消しゴム人形「キンケシ」の社会現象的ブームでも知られ、玩具・アニメ・ゲームを巻き込んだ一大ムーブメントを巻き起こした。2011年からは『キン肉マン』の続編が週刊プレイボーイのウェブ媒体で新連載され、往年のファンを再び熱狂させている、息の長いシリーズである。

あらすじ[編集]

宇宙の彼方にある「キン肉星」の王子でありながら、地球では落ちこぼれのダメ超人として暮らしていたキン肉スグル。ひょんなことから正義超人としての使命に目覚め、怪獣退治やオリンピックを勝ち抜くうちに、本物のヒーローへと成長していく。 物語は「第20回超人オリンピック編」「アメリカ遠征編」「7人の悪魔超人編」「黄金のマスク編(完璧超人編)」「夢の超人タッグ編」「キン肉星王位争奪編」と、トーナメント・章立て形式で展開していく。ライバルであり親友でもあるテリーマン、ロビンマスク、ウォーズマン、バッファローマン、ブロッケンJr.、ラーメンマンといった超人たちとの友情と死闘が、本作最大の魅力である。 敵として登場した超人がやがて仲間になる「ライバルの味方化」、強敵との激闘を通じて互いを認め合う「友情パワー」といったテーマは、後の数多くの少年漫画に受け継がれる王道フォーマットとなった。

主要超人[編集]

主人公のキン肉マン(キン肉スグル)は、火事場のクソ力(かじばのくそぢから)という土壇場で爆発的なパワーを発揮する能力を持つ。普段は情けないダメ超人だが、仲間のピンチには誰よりも熱くなる愛されキャラである。 テリーマンはアメリカ出身の正義超人で、スグルの永遠の親友。ロビンマスクは重厚な鎧をまとった英国紳士超人で、初期最強格として描かれた。ウォーズマンはベアークローを武器とする残虐超人だったが、激闘の末に正義超人へと転じ、絶大な人気を獲得した。バッファローマンは1000万パワーを誇る悪魔超人で、後にスグルの良きライバルとなる。ラーメンマンは「キャベツ超人」と侮られながらも卓越した実力を見せ、スピンオフ作品の主役にもなったほどの人気だとか。

超人と必殺技[編集]

本作の世界には数千とも言われる「超人」が存在し、その出自によって「正義超人」「悪魔超人」「完璧超人(パーフェクト超人)」などの陣営に分かれている。読者投稿で生まれた超人が多数採用されたため、モチーフは「水道の蛇口」「鉄柱」「カレーライス」など何でもアリで、その自由な発想こそがキン肉マン世界の懐の深さである。 必殺技も実在のプロレス技を下敷きにしたものが多く、スグルの「キン肉バスター」「キン肉ドライバー」、ウォーズマンの「スクリュードライバー」「ベアークロー」、ロビンマスクの「タワーブリッジ」などは、当時の子どもたちが真似して大怪我しかける定番の危険技だったらしい。 強さの指標である「超人強度(パワー)」は数値で示され、「1000万パワー」「7億パワー」などインフレしていくのもお約束。だが本作の勝敗を最終的に決めるのは数値ではなく「友情パワー」であり、仲間との絆が逆転を呼ぶという熱い構図が一貫して描かれている。

王位争奪編とその後[編集]

連載後半の集大成「キン肉星王位争奪編」では、スグルの王位継承をめぐって5人の「正義超人」チームと、知性・技巧・無慈悲・強力・飛翔の5人の王子たちが激突する。重厚な群像劇と数々の名勝負が展開され、シリーズの最高到達点として今なお高く評価されている。 2011年からは正統続編がウェブ連載として再始動。往年の超人たちの「その後」と新世代の戦いが描かれ、SNSでは毎話の更新が話題になるなど、往年のファンと新規読者を同時に取り込む稀有な復活劇を見せている。

メディアミックス[編集]

テレビアニメは1983年から放送され、原作と並行して高い人気を博した。主題歌「キン肉マン Go Fight!」「炎のキン肉マン」は世代を超えて歌い継がれる名曲だとか。 玩具展開では、消しゴム製のミニフィギュア「キンケシ(キン肉マン消しゴム)」が爆発的にヒットし、ガチャガチャの定番として社会現象化した。一体数十円という手軽さで子どもたちがこぞって集め、累計販売数は1億8000万個を超えたとされる。大人になったファン向けの高額ソフビ・フィギュアも人気で、コレクター市場は今も活況らしい。 ゲームも数多く発売され、ファミコンの対戦アクション『キン肉マン マッスルタッグマッチ』は、4人の超人で戦うシンプルさと中毒性で語り草となっている。近年もスマホ向けゲームや格闘ゲームへの参戦が続き、世代を超えてブランドが愛され続けている。

炎上とバズ[編集]

  • 続編連載の毎話バズ:ウェブ連載の続編は、衝撃展開や名勝負があるたびにSNSのトレンド入りする。「○○が強すぎる」「この超人が復活した」といった盛り上がりが定期的に起こり、往年のファンを沸かせている。
  • 超人強度の矛盾ツッコミ:「パワーの数値と実際の強さが一致しない」「友情パワーで全部ひっくり返る」といった設定面のツッコミは、ファンの間で愛のあるネタとして語られ続けている。
  • キンケシ高額転売:レアなキンケシや初期ロットがプレミア化し、フリマアプリで高値取引される様子がたびたび話題になる。
  • 読者投稿超人のレジェンド化:かつて読者が投稿したオリジナル超人が物語の重要キャラに昇格する例があり、「自分の考えた超人が出た」という当時の投稿者の証言がバズることもあるらしい。

余談[編集]

  • 作者「ゆでたまご」は嶋田隆司と中井義則の二人組ペンネームで、デビュー当時まだ高校生だったというのは有名な話。
  • 「火事場のクソ力」という言葉は、本作をきっかけに一般にも広まり、土壇場の底力を指す慣用表現として定着したと言われている。
  • 主人公スグルの顔は「困り顔」が基本で、ヒーローらしからぬ情けない表情がかえって愛されている。
  • 超人の出身地や強度には細かい設定があり、ファンは「公式超人図鑑」を片手に強さ議論を延々と戦わせるのが恒例だとか。
  • 「1000万パワーズ」など、敵だった超人がタッグを組んで味方になる展開は、ファンにとってのカタルシスの定番である。
  • プロレスラーが本作のファンを公言することも多く、実際のリングでキン肉マンの技や入場が再現されることもあるらしい。

作品の魅力とギャグ性[編集]

本作の大きな特徴は、シリアスな格闘バトルとくだらないギャグが同居している独特のバランスにある。命を懸けた死闘の最中に突然ふざけた小ネタが挟まれたり、強敵が妙に間の抜けた行動をとったりと、緊張と緩和の落差が読者を飽きさせない。この「笑えるのに熱い」作風こそが、幅広い世代に愛され続ける理由だとされる。 また、敵超人にも人間味あふれるドラマが用意されているのも魅力である。悪役として登場したウォーズマンやバッファローマン、ブロッケンJr.らが、激闘を経て主人公の親友へと変わっていく「ライバルの味方化」は、読者の心を掴んで離さない王道展開となった。勝者が敗者を称え、敗者もまた誇りを失わない――そんな騎士道的なフェアプレー精神が、本作の格闘シーンに独特の気高さを与えている。

後世への影響[編集]

『キン肉マン』が確立した「数値化された強さ」「トーナメント形式の勝ち抜き戦」「敵キャラの掘り下げと味方化」といった要素は、その後の週刊少年ジャンプ作品をはじめとする数多くの少年漫画に受け継がれていった。バトル漫画の文法を整備した先駆的作品の一つと位置づけられている。 さらに、玩具「キンケシ」が築いた「低価格コレクションフィギュア」という市場は、後年のさまざまなミニフィギュア・カプセルトイ文化の原型となったとされる。集めて並べて自慢する楽しさは、現代のガチャガチャ文化やコレクタブル玩具にも脈々と受け継がれているらしい。連載開始から長い年月を経てもなお新作が作られ、玩具が売れ続ける――まさに世代を超えた国民的フランチャイズである。

ゆで理論とご都合主義の美学[編集]

本作を語るうえで欠かせないのが、ファンが敬意とツッコミを込めて呼ぶ「ゆで理論」である。これは作中で展開される、物理法則や過去の設定を時に大胆に無視した独自の論理体系を指す言葉だ。たとえば「火事場のクソ力は火事場のクソ力で打ち消せる」「一度死んだ超人がいつのまにか復活している」「以前は弱かった技が再登場時に超強力になっている」といった具合に、勢いと熱さで全てを押し切ってしまう作劇である。 普通なら粗とされかねないこうした展開も、本作では「ゆで理論」という愛称のもとファンに肯定的に受け入れられている。理屈よりも盛り上がりを優先する潔さ、そして「結局おもしろければ全部アリ」という大らかさこそが、長期連載を支える原動力になっているらしい。ネット上では新展開のたびに「またゆで理論が炸裂した」と笑いとともに語られ、それ自体がひとつのエンターテインメントと化している。 作者のゆでたまご自身もこうしたツッコミを受け入れており、ファンとの絶妙な距離感が作品の温かい雰囲気を作り出している。緻密な伏線回収を売りにする作品とは対極にありながら、唯一無二の存在感で愛され続けているのが『キン肉マン』という作品の凄みである。

連載史と作者ゆでたまご[編集]

作者の「ゆでたまご」は、嶋田隆司(原作)と中井義則(作画)の二人組ユニットである。二人は高校の同級生で、在学中に応募した作品でいきなりプロデビューを果たしたという、漫画界でも屈指の早咲きコンビとして知られる。コンビ名の由来は、嶋田が好きだったゆで卵にちなんでいるという、なんとも脱力したエピソードがあるらしい。 『キン肉マン』は週刊少年ジャンプの黄金期を支えた看板作品のひとつで、同時期に連載されたドラゴンボール北斗の拳』『キャプテン翼』などとともに、1980年代ジャンプの隆盛を象徴する一本である。連載終了後も続編『キン肉マンII世』が描かれ、さらに2011年からは正統続編がウェブ連載として再始動した。半世紀近くにわたって愛され続けるその姿は、まさに不屈のヒーロー・キン肉スグルそのものだと言えるだろう。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]