概要[編集]

吉本新喜劇(よしもとしんきげき)とは、吉本興業が運営する喜劇専門の劇団、およびそこで上演される舞台喜劇である。大阪のなんばグランド花月を本拠に年間を通じて公演が行われ、漫才コントと並ぶ関西の演芸の柱として定着している。

詳細[編集]

成り立ち[編集]

1959年3月1日、梅田グランド会館地下の映画館を演芸場へ転換した「うめだ花月劇場」が開場し、その舞台で始まった「吉本ヴァラエティ」が前身にあたる。2024年3月1日に生誕65周年を迎えた。

出発点が映画館の転用だったことは、この劇団の作り方をそのまま説明する。映画の興行に使っていた箱を寄席に切り替えて客を入れ直す以上、週替わりで新しい演目を用意し続けなければ箱が埋まらない。丁寧に一本を仕上げて長期上演する劇団とは、最初から前提が違っていた。

なぜ毎週作り直せるのか[編集]

新喜劇の台本は、登場人物の役柄とギャグをあらかじめ固定したうえで、話の筋だけを毎回差し替える形で組まれることが多い。誰がどういう人物で、どの場面で何をするかが観客側にも共有されているため、説明に時間を使わずに本題へ入れる。

これは手抜きではなく、週替わり上演という条件から逆算した設計である。コントが「幕間に置かれる」という上演の場から長さと構造を決められたのと同じで、新喜劇は「毎週新作を出す」という条件から様式を決めた。お決まりのギャグが何十年も残っているのは、観客が飽きないからではなく、その型があることで毎週の作り直しが可能になっているからだと説明できる。

座長制[編集]

劇団は座長を中心に編成され、公演ごとにどの座長の回かで色が変わる。現在は間寛平をゼネラルマネージャーとし、すっちー・酒井藍・アキ・吉田裕の4座長体制で、所属は126名にのぼる。

座長が複数いることは、公演を止めないための仕組みでもある。一人の中心人物に依存する劇団は、その人物が抜けた時点で公演が続かない。複数の座長が並列に立っていれば、誰かがテレビや映画の仕事で不在でも舞台は回る。お笑いコンビや個人の演者が抱える「本人が出られなければ成立しない」という制約を、組織の形で外しているといえる。

テレビとの関係[編集]

新喜劇は舞台の芸でありながら、長く毎日放送をはじめとする在阪局の番組として放送されてきた。劇場で上演したものをそのまま放送できるため、番組用に別途作る必要がない。

番組制作会社の項目で触れたとおり、放送局にとって最も重い負担は「毎週新しい中身を用意すること」である。劇場で毎週作られている演目を流せるなら、その負担を劇団側が先に済ませていることになる。関西の局が長期にわたって演芸番組の枠を維持できてきた理由の一つがここにある。

演者の流れ[編集]

新喜劇の団員はNSCを経て入団する経路が定着しており、漫才から転じる例、逆に新喜劇からバラエティ番組へ出ていく例もある。池乃めだか、辻本茂雄、小籔千豊のように舞台とテレビの双方で名前が通った演者も多い。

かつては団員数の削減など大きな見直しが行われた時期もあり、そのたびに「劇団としての質を保つための整理」と見る立場と「人数の多さが劇団の厚みだった」と見る立場が分かれてきた。どちらも劇団を続けるための議論であり、どちらが正しいと決着する種類の対立ではない。

余談[編集]

新喜劇には「笑いどころで音楽が入る」「決まったギャグには客席から声が返る」といった、観客側の参加が前提になっている約束事がある。初見の観客にも分かるように作られているが、繰り返し見るほど反応の精度が上がる構造になっている。

関西では新喜劇が土曜の昼に放送されてきたことから、番組そのものより「その時間帯の空気」として記憶されている面がある。探偵!ナイトスクープと並び、関西の生活時間に組み込まれた番組の代表例として語られることが多い。

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