概要
成人映画(せいじんえいが)とは、18歳未満の観覧を認めない区分で公開される映画、およびそれを前提に作られた作品群を指す語である。
詳細
ジャンル名ではなく区分名
この語が指しているのは内容の種類ではなく、誰が見られるかという上映の条件である。映画の区分は業界の自主的な審査機関によって決められ、成人指定を受けた作品は専門の劇場や指定された上映枠で扱われる。つまり「成人映画」という呼び名は、作品の側から生まれたのではなく、流通の条件の側から付けられている。日本ビデオ倫理協会の影響力が審査の権威ではなく販路の条件から生まれたのと同じで、何を作れるかを実際に決めているのは、どこで掛けられるかのほうである。
ピンク映画
日本で成人向けの劇場用作品が一つの市場として成立したのは1960年代で、1962年公開の作品がその第1号とされることが多い。成人映画専門の劇場に掛けることを前提に作られた低予算の作品群はピンク映画と呼ばれ、独立系の小規模な製作会社が担った。撮影日数と予算が極端に限られる代わりに、決められた条件さえ満たせば内容に口を出されにくいという環境があり、後に一般映画で知られる監督や俳優がここから出ている。
日活ロマンポルノ
1971年から1988年まで、大手映画会社の日活が成人指定作品を自社の主力として制作した一連の作品群がある。経営が行き詰まったなかでの方針転換であり、定期的に劇場へ作品を送り出す体制を維持するための選択だった。
この時期の作品が映画史の文脈で語られるのは、制約の置き方による。決められた尺と予算、一定の条件を満たすことだけが求められ、それ以外の題材や演出は作り手に任された。制約が細かく全体に及ぶと作品は平均化するが、制約が限定されていれば残りの部分は自由になる。東映や松竹の量産体制と同じく、毎週作品を供給し続ける仕組みが若い作り手を現場に立たせ続けたという点も大きい。
家庭用ビデオ以降
1980年代に家庭用ビデオが普及すると、成人向け作品の主な流通経路は劇場から家庭へ移った。劇場は場所を維持する費用が固定でかかるため、観客が減ると作品の数を減らしても採算が改善しにくい。制作の中心がアダルトビデオへ移ったのは、内容の好みが変わったからではなく、同じ内容をより安く届けられる経路が現れたからである。成人映画専門の劇場は各地で閉館が続き、新作の本数も大きく減った。
一方で、近年は旧作の配信や特集上映を通じて当時の作品が再評価される動きもある。作品としての価値と、公開当時に置かれていた扱いが一致しないという状態は、評価が定まりにくい分野に共通して見られる。
余談
- 成人指定という制度は表現を制限する仕組みであると同時に、その区分の内側であれば上映を認める仕組みでもある。制限と許可のどちらの側面を重く見るかで評価が変わるため、この点は決着した議論ではない。
- ピンク映画と日活ロマンポルノは混同されやすいが、前者は成人映画専門館に掛けるために独立系が作った作品群、後者は大手映画会社が自社の配給網で展開した作品群であり、製作と流通の規模が異なる。