概要
サブスクリプション(サブスク)とは、商品やサービスを一定期間ごとの定額料金で利用する方式のことで、日本では動画配信・音楽配信・漫画アプリ、電子コミックなどで広く使われている。
詳細
買い切りとサブスクリプションの違いは、支払いが「所有」に対するものか「利用できる状態」に対するものかにある。映画のDVDを買えば手元に残るが、定額制の動画配信は契約が切れた時点で見られなくなる。利用者の側から見ると、支払いの総額が積み上がっていく代わりに、一つひとつの作品について買うかどうかを判断しなくてよくなる。
この「判断をしなくてよくなる」という点が、提供する側にとっての本質的な利点である。買い切りの商売では、売る側は商品ごとに購入の意思決定を勝ち取らなければならない。定額制では意思決定は契約時と解約時の二回しか発生しないため、利用者が離脱しうる地点の数そのものが減る。漫画アプリの「待てば無料」が判断を金銭から時間にずらしているのと同じで、どこで判断を起こさせるかの設計が売り方の中心にある。
市場の規模
GEM Partnersの調査によれば、日本の定額制動画配信(SVOD)市場は2025年に6,017億円となり、前年比14.3%増を記録した。2021年以降は成長率が鈍化し2024年は前年比4.1%増にとどまっていたため、2025年は成長が再加速した形になる。
注目すべきは成長の中身である。伸びの主因は利用者数の増加ではなく、各社の価格改定による単価の上昇と、1人あたりの利用サービス数の増加(前年1.8から2.0へ)だった。つまり新しい利用者が増えたのではなく、すでに使っている人がより多くのサービスに、より高い料金で払うようになったことで市場が伸びている。サービス別のシェアではNetflixが27.1%で7年連続の首位(Disney+など他社も同じ市場で競合している)、2位がU-NEXTで17.1%、3位がPrime Videoで12.1%である。
複数契約という前提
1人あたりの利用サービス数が2.0に達したという数字は、この市場の性格をよく表している。動画配信は独占作品で差がつくため、見たい作品(韓国ドラマやアニメの独占配信など)がサービスをまたいで散らばる。ひとつに絞ると見られない作品が出るので、利用者は複数を契約するか、見たい作品のある月だけ契約して解約する行動をとる。
ここで生じるのが、サービス側にとっての矛盾である。独占作品を増やせば契約は取れるが、業界全体として作品が分散するほど利用者の負担は増える。負担が増えれば解約と再契約を繰り返す行動が増え、契約の継続を前提にした収入の安定という定額制の利点が薄れる。競争の手段として合理的な行動が、全体としては定額制の強みを削っていく構図になっている。
動画以外への広がり
音楽配信、漫画アプリやコミックシーモアの読み放題、ソフトウェア、飲食店の月額利用、衣料品のレンタル、自動車まで、定額制は業種を越えて広がった。ただし定着の度合いには差がある。利用の回数が多く、1回あたりの単価が小さく、在庫を追加で用意する費用がほとんどかからないもの(デジタルのコンテンツ)は定額制と相性がよい。逆に、提供のたびに実物の費用が発生するものは、使う人が増えるほど提供側の負担も増えるため、同じ設計は成立しにくい。
YouTubeのメンバーシップのように、個人が自分の活動に対して定額の支援を受ける形も定額制の一種だが、この場合に売られているのは作品そのものというより継続的な関係である。
余談
- 「サブスク」という略称が日本で定着したのは2010年代後半で、音楽配信の普及と時期が重なる。英語ではsubscriptionは雑誌の定期購読を指す語として古くから使われており、新しい言葉ではない。
- 定額制と月額課金は同じ意味で使われることが多いが、厳密には利用量に応じて料金が変わる従量制との対比で語られる概念である。
- 見放題を契約しているのに見る作品が決まらない、という現象は選択肢が増えたときに一般に起こることで、配信サービス各社が「あなたへのおすすめ」の表示に力を入れる理由でもある。