概要
レースクイーンとは、自動車レースの会場でチームやスポンサーのイメージガールを務める女性、およびその職種を指す和製英語である。サーキットでの活動と並行してグラビアに進出する例が多く、日本ではグラビアアイドルの主要な供給源のひとつとして機能してきた。
詳細
起源
日本におけるレースクイーンの原型は、1960年代後半の丸善石油のCM「Oh! モーレツ」にさかのぼる。サーキットを舞台にモデルの小川ローザが登場したこのCMが、レース場に立つ女性という図像を広く知らしめた。
その後、1970年代から1980年代にかけてレースチームやタイヤ・オイルメーカーがキャンペーンガールを会場に配置するようになり、1980年代後半から1990年代にかけて「レースクイーン」という呼称と職種が定着した。
なぜレースの現場に必要なのか
レースクイーンの役割は、外から見ると装飾的に見えるが、実際にはスポンサー掲出の仕組みと直結している。
モータースポーツの収入はスポンサー料が中心で、スポンサーが求めるのは「自社のロゴが媒体に載ること」である。ところがレース中の車両は高速で移動しており、写真に収めてもロゴが読み取れる保証がない。一方ピットやグリッドに立つ人物は静止しているため、ロゴを正面から確実に写せる。レースクイーンの衣装にスポンサー名が大きく入っているのはこのためで、彼女たちは実質的に「移動しない広告面」として機能している。
さらに、レース写真は競技メディアにしか載らないが、レースクイーンの写真は一般の芸能メディアや写真週刊誌にも載る。同じ1日のイベントから、競技ファン向けとそれ以外向けの二系統の露出を同時に取れるという点で、費用対効果の高い仕組みになっている。
グラビアへの登竜門として
レースクイーンがグラビアの入口として機能してきた理由は、この職種が持つ条件にある。
第一に、シーズンを通した契約であるため、活動実績が継続的に積み上がる。第二に、レース会場には多数のカメラマンが常駐しており、本人が営業をしなくても写真が流通する。第三に、モータースポーツの主要な観客層と、青年誌・写真週刊誌の読者層が大きく重なっている。
1990年代には岡本夏生や飯島直子といったレースクイーン出身者がテレビのレギュラーを持つようになり、2000年代に入ると吉岡美穂が「癒やし系ブーム」の火付け役となって、レースクイーンからグラビアへ進む道筋がはっきりした。
ゼロイチファミリア所属の川崎あやや林ゆめのように、2010年代以降もレースクイーン経験を経てグラビアの第一線に立つ例は続いている。
日本レースクイーン大賞
2010年に始まったコンテストで、東京オートサロンでの授賞式が恒例となっている。実行委員会が選んだ約100人がノミネートされ、一般投票によって100人から20人、さらに5人へと絞り込まれ、上位5人が受賞者となる方式を取っている。
この賞が持つ実務的な意味は、業界内の評価ではなく一般投票で決まる点にある。受賞歴はそのまま「集票力の証明」として扱われるため、雑誌側にとっては誌面に呼んだときの反応を予測する材料になる。グラビアのオファーが受賞を境に増えるという現象は、この構造から説明できる。
グラビア業界との接点
レースクイーンからグラビアアイドルへ進んだ人物は、ゼロイチファミリアのようなグラビア主体の事務所に所属して、『週刊プレイボーイ』『週刊ヤングジャンプ』『週刊ヤングマガジン』といった青年誌や、『FLASH』『FRIDAY』などの写真週刊誌に登場するのが一般的な流れである。そこから写真集の刊行につながることも多く、ワニブックスをはじめとする版元が受け皿になっている。
格闘技イベントのラウンドガールも近い性格の仕事で、森香穂が「RIZINガール2023」に選出された例のように、サーキットとリングは同じ層のタレントが行き来する場になっている。
近年の変化
2010年代以降、呼称を「レースクイーン」から「レースアンバサダー」「サーキットクイーン」などに切り替えるチームが出てきた。国際的なモータースポーツの潮流としても、グリッドに女性を立たせる演出を取りやめる動きがあり、職種そのものの位置づけは各カテゴリで再定義が進んでいる。
一方で、InstagramやX (SNS)での本人発信が一般化したことにより、チームの広報機能を離れて個人としてファンを抱えるレースクイーンが増えた。会場での露出だけに依存しない形へと、収益と認知の構造が移りつつある。
よくある質問
レースクイーンとキャンペーンガールは違うのか。
キャンペーンガールは企業の販促イベント全般に立つ職種の総称で、レースクイーンはそのうちモータースポーツの会場に特化したものにあたる。契約がレースシーズン単位である点、衣装にスポンサーロゴが入る点が特徴である。
どうすればレースクイーンになれるのか。
チームやスポンサーごとのオーディション、またはモデル事務所経由の紹介が一般的である。シーズン前にチーム単位で募集が行われる。
日本レースクイーン大賞とは。
2010年に始まった一般投票によるコンテストで、東京オートサロンで授賞式が行われる。約100人のノミネートから投票で20人、5人と絞り込まれる。
レースクイーン出身の有名人は。
岡本夏生、飯島直子、吉岡美穂などが挙げられる。近年では川崎あやや林ゆめがレースクイーンを経てグラビアで活動している。
余談
- 「レースクイーン」は和製英語で、英語圏では長く「グリッドガール」と呼ばれていた。日本語の語感では「クイーン」が主役の印象を与えるが、英語の呼称はあくまで立ち位置(グリッド)を指していた。
- グラビアアイドルの経歴欄を見ていくと、レースクイーン、ゼロイチファミリアのようなグラビア事務所、アイドルグループ卒業、コスプレイヤーの4系統が入口として繰り返し出てくる。それぞれ「継続的な撮影機会」「誌面への導線」「既存のファン」「自前の集客」という違う資産を持って入ってくることになる。
- レース会場の写真は競技メディアと芸能メディアの両方に配信されるため、同じ人物の同じ日の写真が、まったく違う見出しで二重に流通する。スポーツ紙の同じ日付の紙面に、競技結果とレースクイーンの写真が別ページで載るというのはよくある光景である。