概要
聖地巡礼(せいちじゅんれい)とは、本来は宗教上の聖地を信者が参拝して回ることを指す言葉だが、現代の日本では主に、アニメ・漫画・映画・ドラマなどの舞台やモデルになった場所をファンが訪れる行為を指す。2016年には新語・流行語大賞のトップテンに選ばれ、地方の観光振興策としても定着している。
詳細
本来の「聖地巡礼」は、エルサレムやメッカ、四国八十八か所のような宗教的な聖地を訪ね歩く行為である。これをもじって、作品の舞台を「聖地」、その場所を訪ねることを「巡礼」と呼ぶファンの言い回しが、1990年代ごろからオタクの間で使われるようになった。
アニメの聖地巡礼が大きな社会現象として注目されたのは、2007年に放送されたアニメ『らき☆すた』がきっかけとされる。作中に登場する神社のモデルになった埼玉県の鷲宮神社に大勢のファンが訪れ、初詣の参拝客が大きく増えた。地元の商工会がファンと協力してイベントやグッズを展開したことで、「アニメで町おこし」の成功例として全国に知られるようになった。
以後、京都アニメーション作品や新海誠監督の映画などが、背景美術に実在の風景を精密に描き込むスタイルを広げたことで、聖地巡礼はアニメファンの定番の楽しみ方になった。背景が写真のようにリアルであるほど、ファンは「同じ場所で同じ構図の写真を撮る」ことを目的に現地を訪れる。
代表的な聖地
- 鷲宮神社(埼玉県):『らき☆すた』。アニメ聖地巡礼ブームの原点とされる。
- 大洗町(茨城県):『ガールズ&パンツァー』。町ぐるみでファンを受け入れ、商店街に登場人物のパネルが並ぶ。
- 秩父市(埼玉県):『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』。
- 沼津市(静岡県):『ラブライブ!サンシャイン!!』。路線バスやマンホールにもキャラクターが使われた。
- 鎌倉高校前駅付近の踏切(神奈川県):『スラムダンク』のオープニングに似た風景として、海外からの観光客が多く訪れる。
- 須賀神社の階段(東京都新宿区):新海誠監督の映画『君の名は。』のラストシーンの舞台として知られる。
- 下北沢(東京都):『ぼっち・ざ・ろっく!』。
- 豊郷小学校旧校舎群(滋賀県):『けいおん!』の校舎のモデルとされる。
アニメツーリズム協会と「アニメ聖地88」
2016年、KADOKAWAやJTB、日本航空などが中心となって「アニメツーリズム協会」が設立された。協会は毎年、国内外のファン投票などをもとに「訪れてみたい日本のアニメ聖地88」を選定し、自治体と連携して聖地を観光資源として売り出している。
2026年2月には、協会の設立10周年を記念して、選定作品数を88から100作品に拡大した「2026年版」が発表された。世界110の国・地域から約8万5千票が集まり、新たに『ラブライブ!スーパースター!!』(茨城県牛久市)、『頭文字D』(群馬県)、『ウマ娘 シンデレラグレイ』(岐阜県笠松町)などが選ばれた。
オーバーツーリズムの問題
聖地巡礼の人気が高まるにつれて、住宅地や生活道路に観光客が集まる問題も目立つようになった。特に、訪日外国人観光客の増加とともに、スラムダンクの聖地とされる鎌倉高校前の踏切では、線路内への立ち入りや交通の妨げが問題になり、地元の自治体が警備員を置くなどの対策を取っている。
聖地の多くは観光地として作られた場所ではなく、普通の住宅街や学校、神社である。そのため、撮影マナーや私有地への立ち入りをめぐって、ファンと住民の間で摩擦が起きることもある。一方で、商店街の活性化や移住・関係人口の増加につながった例も多く、聖地巡礼が地域にもたらす影響の評価は場所によって大きく異なる。
よくある質問
- 聖地巡礼とはどういう意味?
- アニメや映画などの舞台になった場所を訪れること。本来は宗教上の聖地をめぐる行為を指す言葉である。
- 聖地巡礼の始まりは?
- ファンによる舞台探訪は以前からあったが、社会現象として注目されたのは2007年の『らき☆すた』と鷲宮神社の例が最初とされることが多い。
- アニメ聖地88とは?
- アニメツーリズム協会が毎年選定している「訪れてみたい日本のアニメ聖地88」のこと。2026年版は10周年を記念して100作品に拡大された。
余談
- ファンの間では、聖地の場所を特定して写真を比べる作業を「舞台探訪」とも呼ぶ。作中の背景と現地の写真を並べて公開するブログや動画は一つのジャンルになっている。
- 鷲宮神社では、ファンが奉納したキャラクターのイラスト入りの絵馬(いわゆる「痛絵馬」)が名物になった。
- 萌えキャラと聖地巡礼を組み合わせた「萌えおこし」は、地方自治体の観光PRの手法として全国に広がっている。