概要
電子商取引(でんししょうとりひき)とは、インターネットなどの電子的な手段を通じて行われる商取引の総称である。ECとも呼ばれ、企業と消費者の間の取引(BtoC)、企業間の取引(BtoB)、個人間の取引(CtoC)に分けて集計される。
詳細
経済産業省が毎年実施している市場調査によると、2024年の日本国内のBtoC-EC市場規模は26兆1,225億円で前年比5.1%増だった。内訳は物販系が15兆2,194億円(3.7%増)、旅行や飲食などのサービス系が8兆2,256億円(9.43%増)、電子書籍や音楽配信などのデジタル系が2兆6,776億円(1.02%増)となっている。
物販系のEC化率、すなわち物を買う取引全体のうち電子商取引が占める割合は9.78%である。また物販系のうちスマートフォン経由は9兆3,904億円で、全体の61.7%を占めた。企業間取引であるBtoB-ECは同じ調査で500兆円を超える規模とされ、EC化率も4割台と、BtoCとは桁が一つ違う。
EC化率9.78%という数字の読み方
「ECが小売を置き換えた」という印象と、物販系EC化率9.78%という数字は噛み合わない。物を買う取引の9割は、いまも店で行われている。
ずれが生まれるのは、この数字が平均だからである。書籍、家電、生活雑貨のようにEC化率が3割を超える分野がある一方で、食料品や飲料のように数%にとどまる分野もある。全体の9.78%という値は、どの店にも一様に1割の影響が出ていることを意味しない。ECの影響を受け切った分野と、ほとんど受けていない分野が同居していて、その平均がたまたまこの値になっている。業界ごとの話をするときに全体のEC化率を持ち出すと、議論が噛み合わなくなるのはこのためである。
サービス系が伸びてデジタル系が伸びない
2024年の伸び率は、サービス系が9.43%、デジタル系が1.02%だった。商品そのものがデータであるデジタル系のほうが伸びていないのは、一見すると逆に見える。
理由は、デジタル系がすでに定額制へ移り終えているからである。音楽も映像も電子書籍も、1本ずつ買う形から月額で聴き放題・見放題の形へ切り替わった。定額制の売上は利用者数の増減でしか動かないので、単価と点数の両方が伸びる余地は小さい。
対してサービス系は、旅行、飲食の予約、チケットといった現実の体験の取引である。商品は現実に残ったまま、注文と決済の部分だけがネットへ移っている。つまりECが伸びる余地は「商品をデータにすること」よりも「取引をネットへ移すこと」のほうに多く残っている。デジタル化できるものを探すより、既に存在する取引の手続きを置き換えるほうが市場としては大きい。
BtoBのEC化率が高い理由
BtoBのEC化率が4割を超え、BtoCの9.78%を大きく上回るのは、企業のほうがネットに慣れているからではない。取引の性質が違うためである。
企業間の取引は、同じ相手と同じ商品を繰り返しやり取りすることが多い。毎月決まった資材を決まった量だけ発注するような取引では、一度注文の形式を決めてしまえば以後は自動化できる。一方、消費者の買い物は毎回相手も商品も違い、選ぶという工程が取引のたびに発生する。EC化率の差は、情報技術への習熟ではなく、取引がどれだけ反復的かで説明できる。
スマートフォンが6割を超えたこと
物販系の61.7%がスマートフォン経由であることは、取引の設計に条件を課している。画面が小さく、操作は数十秒で終わることが前提になるからである。
この環境では、終わりが読めない取引は相性が悪い。買い手が競って値段を決める方式より、押した瞬間に終わる定額出品のほうが受け入れられたのは、商品が違ったからではなく取引の終わり方が違ったからである(メルカリがフリマアプリとして別の市場を作った要因でもある)。検索で目的の商品にたどり着く買い方と、何を買うか決まっていない状態で並んだ商品を眺める買い方とで、必要な画面の作りが分かれるのも同じ制約から来ている(ZOZOTOWNが「街」として設計された背景にあたる)。