概要[編集]

通信販売(つうしんはんばい)とは、店舗で客と対面せず、広告やカタログ、電話、インターネットなどを通じて注文を受け、商品を郵送や宅配で届ける販売方法である。略して通販とも呼ばれる。

詳細[編集]

日本で最初の通信販売は、1876年(明治9年)に農学者の津田仙が自ら発行する『農業雑誌』に掲載した広告とされる。アメリカ産のトウモロコシの種を、郵便切手を同封して送れば10銭で分けるという内容だった。これを支えていたのが1871年に始まった郵便制度で、1873年ごろには全国均一料金となり、1892年には小包郵便が始まっている。

その後、1882年に天賞堂が懐中時計などの通信販売を手がけ、1899年には三井呉服店(のちの三越)や高島屋が通信販売部を設けた。戦後はカタログ通販、1970年代からはテレビ通販、1990年代末以降はインターネット通販へと主な経路が移っている。Amazonのような総合型の通販サイトが定着した2000年代以降は、スマートフォンからの注文が中心になった。公益社団法人日本通信販売協会の調査によれば、2024年度の通販・EC市場の売上高は14兆5,500億円で前年比7.3%増、26年連続のプラス成長となった。直近10年の平均成長率は9.1%である。

成立の条件は運送ではなく決済[編集]

通信販売が成り立つために必要なのは、商品を運ぶ手段だけではない。顔を合わせない取引では、代金と商品のどちらかを先に渡さなければならず、その「先に渡す」を誰がどうやって引き受けるかが実質的な障壁になる。

1876年の広告が「郵便切手を同封して送れ」という形式だったのは、この問題への当時なりの答えだった。切手は少額で分割でき、郵送できて、受け取った側は確実に使える。現金を封筒に入れるより安全で、確認の手間も少ない。以後の通信販売の歴史は、代金引換、振込、クレジットカード、コンビニ払い、電子決済と、ほぼそのまま決済手段の歴史をなぞっている。運送の技術はかなり早い段階で足りていたが、支払いの安全をどう確保するかが経路ごとの普及速度を決めてきた。

最初の商材が種だったこと[編集]

初期の通信販売の商材が種子だったのは、軽くて小さく、壊れず、そして届いた時点では品質を確かめられないという性質による。撒いて芽が出るまで、買った側には良し悪しが分からない。

確かめられないものを遠隔で売るには、商品そのものではなく「誰が売っているか」への信用が要る。津田仙が農学者として、自ら発行する農業専門誌の中でそれを売ったのは、媒体と書き手の信用を商品の保証に転用した形である。雑誌広告欄が長く通販の主戦場だったのも、誌面そのものが選別を通っているという前提が働いていたからである。現在の通販で購入者のレビューや評価点が重く扱われるのも、同じ問題への現代的な答えにあたる。商品を手に取れないという条件が変わっていない以上、保証の出どころを別に用意する必要も変わっていない。

「通販が伸びている」の読み方[編集]

26年連続のプラス成長という数字は、景気の波とほとんど無関係に伸び続けてきた数少ない小売経路であることを示している。ただしこの集計は経路としての通信販売全体を指しており、電子商取引を含む。

したがって「通販が伸びた」と「カタログ通販が伸びた」はまったく別の話になる。紙のカタログやテレビ通販が縮んでも、ネット経由が上回って伸びれば合計は増える。統計の名前が指す範囲と、読み手が思い浮かべる中身がずれやすい典型例で、同じ売上が調査によって別の数字として現れる理由でもある。

店に来られない客を相手にする商売[編集]

1899年に百貨店が通信販売部を設けているという事実は、遠隔地の客に売る仕組みが百年以上前から存在していたことを意味する。地方への出張販売で獲得した客に、その後も継続して売るための手段として通信販売部が置かれた。

この経緯からすると、インターネット通販が作ったのは新しい市場というより、既にあった経路の置き換えという側面が大きい。変わったのは注文を受ける手段と、その結果として扱える商品の幅と回数である。カタログを刷って配る費用が要らなくなったことで、品目数の上限と更新の頻度という二つの制約が同時に外れた(ZOZOTOWNメルカリが成立した前提でもある)。

余談[編集]

  • 特定商取引法上の「通信販売」には電子商取引も含まれる。対面での販売と扱いが異なる点として、いわゆるクーリング・オフの規定が適用されず、返品できるかどうかは事業者が表示した返品特約によって決まる。返品条件の表示が細かく定められているのはこのためである。
  • 「通販」「ネット通販」「EC」は指している範囲がそれぞれ違う。通信販売は法律上の区分でカタログや電話注文を含み、ECは注文を受ける手段による区分である。

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