海賊版

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概要

海賊版とは、著作権者の許諾を得ずに複製・配布・公開された著作物、またはその行為を指す語である。書籍、音楽、映像、ソフトウェア、漫画など対象は広く、日本では2010年代後半に無断公開サイトへの対応が政策課題となった。

詳細

語の由来と範囲

海賊版という呼び方は、船を襲って積荷を奪う海賊になぞらえた比喩である。実際には物が奪われるわけではなく、複製が作られる点が異なる。この違いは損害の計算にも影響し、無断複製の件数をそのまま売れ損ねた部数とみなしてよいかという論点が繰り返し議論されてきた。

対象となる媒体によって、事情はかなり異なる。物理的な複製品を製造して販売する形態は製造と流通の費用がかかるため規模に限界があるが、ネットワーク上の公開は複製の費用がほぼゼロで、国境も越える。2010年代以降に問題の性質が変わったのは、この費用構造の変化による。

インターネット上の無断公開

インターネット上の無断公開サイトは、閲覧者から料金を取らず広告収入で運営される形が多い。閲覧が無料であることは利用者を集めるうえで有利だが、収入が表示回数に連動するため、掲載作品を増やし続けることが運営上の要請になる。

日本では漫画村の事例が大きく報じられ、出版業界が被害を公表し、政府が対応に乗り出す契機となった。

制度上の対応

2018年4月、政府は特に悪質なサイトについて、接続事業者によるアクセス遮断(ブロッキング)を違法としない方針を示した。これに対し、通信の内容を確認する行為が憲法の定める通信の秘密に触れるという指摘が出され、同年6月から10月の検討会議は賛否が対立したまま取りまとめられずに閉会した。

その後の立法は別の方向で進んだ。2020年の著作権法改正では、侵害コンテンツへリンクを張って誘導する「リーチサイト」の規制と、侵害コンテンツと知りながら行うダウンロードの違法化が盛り込まれている。リンクを張る行為そのものをどこまで規制できるかについては、表現の自由との兼ね合いから慎重な線引きが求められ、対象を限定する形で条文が作られた。

議論の構図

この分野の議論が単純な賛否に収まらないのは、対立している二つの要請がどちらも制度の基礎にあるためである。

権利保護を重視する立場は、国外にサーバーと運営者がある場合、削除要請も摘発も届かず、国内で実効性のある手段が接続の遮断以外に残らないと説明する。通信の自由を重視する立場は、遮断の仕組みを一度認めれば、どの対象に適用するかの判断が後から動きうると指摘する。

いずれも仮定の話ではなく、制度が実際にどう運用されるかという見立ての違いであり、結論の出た論点ではない。

正規の配信との関係

無断公開への対応として、法的措置と並行して正規の閲覧経路を整える動きが進んだ。電子書籍の普及、ピッコマLINEマンガのような話単位の配信、動画配信サービスの定額制はいずれも、無断公開の利点だった「すぐ読める・すぐ見られる」という条件を正規側でも満たす方向の変化である。

利用者が無断公開に流れる理由を価格だけに求めるか、入手のしやすさに求めるかで、対策の設計は変わる。配信サービスの拡充が状況を変えた要素のひとつとされるのは、後者の見立てに沿った説明である。

余談

  • 同人誌における二次創作は、権利者が明示的に許諾していない点では無断利用にあたるが、条件を提示したうえで黙認する運用が広く行われており、無断公開サイトとは扱いが異なる。完全許諾でも完全禁止でもない中間が選ばれている理由は、二次創作の項に詳しい。
  • ソフトウェアの分野では、複製を技術的に制限する仕組みが早くから導入された。同じ仕組みが正規の購入者の利便性も下げるため、対策の強度をどこに置くかという問題は媒体を問わず繰り返し現れる。
  • 「海賊版」という語は比喩であり、法律の条文で使われる用語ではない。条文上は著作権侵害という一般的な表現が用いられる。

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