概要[編集]
民間放送とは、広告収入などを財源として民間企業が行う放送のことである。日本では受信料で運営されるNHKと対になる存在として「民放(みんぽう)」と略され、日本テレビ・テレビ朝日・TBS・フジテレビ・テレビ東京をはじめとする各局がこれにあたる。
詳細[編集]
収入の形が性格を決める[編集]
NHKと民間放送の違いは、しばしば「公共か商業か」という言葉で語られるが、実態としては財源の違いがそのまま性格の違いになっている。
受信料は、番組を見たかどうかに関係なく集まる。誰も見ていない時間帯の番組でも収入は変わらないため、視聴者の少ない分野を扱う余地が構造的に確保される。一方、民間放送の収入は広告枠の売上である。広告枠の値段は、その枠でどれだけの人に届くかで決まるため、見られない番組は枠の価値を下げ、収入に直結する。
つまり民間放送が視聴率を気にするのは姿勢の問題ではなく、収入の計算式にそれが入っているからである。どちらの仕組みが望ましいかについては、選択肢が並立していること自体に意味があるという見方と、財源の違いが番組の偏りを固定しているという見方の双方があり、決着した論点とは言いがたい。
収入の内訳[編集]
収入は大きく、広告枠の売上である放送収入と、イベント・映像の二次利用・放映権の取引・商品販売などの放送外収入に分かれる。長らく大半を放送収入が占めてきたが、近年は放送外収入の比重が上がっている局が多い。アニメ事業や海外向けの権利販売が伸び、動画配信サービスへの番組供給も収入源になった。
背景には、テレビ広告の市場全体がインターネット広告に押されてきた事情がある。放送枠を売るだけでは全体が縮むため、作った映像を別の窓口でも売る方向に各局が動いた。TVerのような見逃し配信を民放各局が共同で立ち上げたのも、放送外の収入経路を自前で持つ必要があったからである。
日本の民間放送の成り立ち[編集]
日本でラジオの民間放送が始まったのは1951年、テレビは1953年である。テレビ放送の開始はNHKが同年2月、民間放送は同年8月であり、両者はほぼ同時に走り出している。その後、全国を覆う仕組みとしてキー局を中心とするネットワークが形成され、地方局が系列のキー局の番組を受けて放送する形が定着した。
放送に使う電波は有限であるため、誰が放送できるかは免許によって決まる。新規参入が容易でない業種であり、既存の局の顔ぶれが長期間ほとんど変わらないのはこのためである。
民放連[編集]
各社が加盟する業界団体として日本民間放送連盟(民放連)があり、放送基準の策定や共通課題への対応を担っている。番組内の表現に関する自主基準の多くは、法律ではなくこの自主規制の枠組みで運用されている。
何を放送しているか[編集]
編成の中身はテレビドラマ・バラエティ番組・報道番組・スポーツ中継・アニメで大半を占める。各局の視聴率はビデオリサーチが一元的に調査しており、この数字が広告枠の値段を決める基準として使われる。
日本テレビ・テレビ朝日・TBS・フジテレビ・テレビ東京の5社がキー局としてネットワークの中心にあり、地方局はその系列に属する形で番組を受けている。近年は各局がTVer・Hulu・ABEMAといった配信の窓口を持ち、YouTubeの公式チャンネルで番組の一部を公開する運用も定着した。
よくある質問[編集]
Q. 民放は受信料を払わなくても見られる? 見られる。民間放送の収入は広告であり、視聴者から直接料金を取る仕組みにはなっていない。
Q. 民放は何社ある? テレビ・ラジオを合わせると全国に200社近くが存在する。テレビの地上波に限っても各県に複数局があるのが一般的である。
Q. テレビ東京だけ系列局が少ないのはなぜ? 開局が他局より遅く、ネットワークを広げる時期に新規の免許枠が限られていたためである。系列局の数が少ないことは、番組編成の自由度につながっているとも言われる。
Q. 民間放送とケーブルテレビは違う? 放送の方式が違う。ここでいう民間放送は主に地上波の無料放送を指し、ケーブルや衛星の有料放送は契約者から料金を取る別の形態である。
余談[編集]
- 民間放送が始まった当初、テレビ受像機は個人が買える値段ではなく、街頭に置かれた共同のテレビに人が集まって見ていた。広告主にとっては、一台の前に数百人が立っている状況は極めて効率のよい出稿先だった。
- 「民放」という略称は日常語として完全に定着しているが、「民間放送」と正式に書かれる場面はほとんど放送法の条文と業界内の文書に限られる。
- 収入源の違いは、災害報道の性格にも表れる。広告を止めて報道を続ける判断は、そのまま収入を失う判断でもあるため、どこで通常編成に戻すかは各局の判断が分かれる場面になっている。