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サイトの所在は[[中国]]だったが、利用者はほぼ日本にいた。CODAの発表では、アクセスの約95%が日本からのものだった。この数字がこの案件の性格をほぼ言い表している。市場は日本にあり、サーバーと運営者は日本の外にある。国内の権利者にとって最も影響の大きいサイトが、国内の手続きでは動かしようのない場所に置かれていたということである。 | |||
=== 2016年の閉鎖と、消えなかった理由 === | === 2016年の閉鎖と、消えなかった理由 === | ||
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B9GOODのようにサーバーも運営者も国外にある場合、削除要請も捜査も国内の手続きだけでは届かない。残る道は、現地の捜査機関を動かすか、接続する側で止めるかのどちらかになる。後者(ブロッキング)は通信の秘密との衝突があり日本では法制化が見送られた経緯があるため、本件で選ばれたのは前者だった。越境の海賊版対策が「どの国の法律を適用するか」より先に「どの国の捜査機関を動かせるか」の問題になっているのは、このためである。 | B9GOODのようにサーバーも運営者も国外にある場合、削除要請も捜査も国内の手続きだけでは届かない。残る道は、現地の捜査機関を動かすか、接続する側で止めるかのどちらかになる。後者(ブロッキング)は通信の秘密との衝突があり日本では法制化が見送られた経緯があるため、本件で選ばれたのは前者だった。越境の海賊版対策が「どの国の法律を適用するか」より先に「どの国の捜査機関を動かせるか」の問題になっているのは、このためである。 | ||
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同種のサイトが縮小した時期は、[[Netflix]]、[[U-NEXT]]、[[DMM TV]]、[[ABEMA]]といった定額制の配信サービスが[[日本]]で広く使われるようになった時期と重なる。規制の強化と正規サービスの普及のどちらがどれだけ効いたのかは切り分けが難しく、評価は分かれている。 | |||
はっきり言えるのは、無料で見たいという動機自体は消えていないということである。[[アニメ]]を検索したときに何が最初に出てくるか、その並びが変わっただけとも読める。[[漫画]]の分野で[[漫画村]]や[[星のロミ]]の閉鎖後に起きたことと、構図は同じである。 | |||
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2026年9月23日 (水) 15:27時点における版
概要
B9GOOD(ビーナイングッド)とは、日本のアニメを中心に無許諾の動画を掲載していた海賊版サイトである。旧称はB9DMで、2023年3月に中国の公安当局によって摘発され閉鎖した。
詳細
15年続いたサイト
運営の開始は2008年ごろとされ、2023年2月までおよそ15年にわたり、複数のドメイン名を移りながら運営が続けられていた。掲載されていたのはアニメのほか映画やドラマで、一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構(CODA)の発表によれば、確認された無断掲載作品は約45,880本にのぼる。
サイトの所在は中国だったが、利用者はほぼ日本にいた。CODAの発表では、アクセスの約95%が日本からのものだった。この数字がこの案件の性格をほぼ言い表している。市場は日本にあり、サーバーと運営者は日本の外にある。国内の権利者にとって最も影響の大きいサイトが、国内の手続きでは動かしようのない場所に置かれていたということである。
2016年の閉鎖と、消えなかった理由
CODAの働きかけにより、2016年10月に中国当局は当時「B9DM」の名称で運営されていた同サイトを一度閉鎖させている。しかし運営は止まらなかった。運営者は地域制限(いわゆるジオブロッキング)を導入し、中国国内からのアクセスを遮断したうえで運営を続けたためである。
この手口は、仕組みとしては単純だが効き方が強い。現地の当局や権利者団体が中国国内から確認しようとすると、サイトは存在しないように見える。一方、日本からは変わらず閲覧できる。地域制限はもともと配信権を国ごとに管理するための正規の仕組みだが、ここでは監督の目から外れるための道具として使われた。現地で問題が観測されないことと侵害が止まったことは、まったく別の事柄である。
摘発と刑事手続き
2023年2月から捜査が始まり、同年3月27日にサイトは閉鎖された。摘発を行ったのは中国・江蘇省の公安当局で、4名が刑事訴追された。CODAはアニプレックス、テレビ東京、東映アニメーション、東宝、日本放送協会、バンダイナムコフィルムワークスの6社の要請を受けて刑事告訴を行っている。
2023年12月に主犯とされる男性に対し、懲役3年・執行猶予3年6か月および罰金180万元の判決が言い渡され、アップロードを担当していた者にもそれぞれ有罪判決が出された。2024年3月に上訴期間が終了し、判決が確定した。CODAはこれを、日本からの刑事告訴に基づいて海外の海賊版サイト運営者が刑事訴追された初めての事例と説明している。
数字の読み方
45,880本という作品数と、180万元という罰金額は、同じ侵害について別々の計算から出てきた数字である。作品数は侵害の広がりを数えたもので、罰金は現地の量刑の枠組みの中で決まる。星のロミの記事で触れた被害額の推計と同じで、何を単位にするかで桁が変わる。そのため「どれだけの損害が生じたか」を一つの数字で示すことは、この種の案件では難しい。
国内法で作れる仕組みとの違い
日本国内では、Anitubeや漫画村の問題を受けて2020年に著作権法が改正され、侵害コンテンツへ誘導するリーチサイトの規制と、侵害と知りながら行うダウンロードの違法化が整理された。ただしこれらは、国内にいる者の行為に対して働く仕組みである。
B9GOODのようにサーバーも運営者も国外にある場合、削除要請も捜査も国内の手続きだけでは届かない。残る道は、現地の捜査機関を動かすか、接続する側で止めるかのどちらかになる。後者(ブロッキング)は通信の秘密との衝突があり日本では法制化が見送られた経緯があるため、本件で選ばれたのは前者だった。越境の海賊版対策が「どの国の法律を適用するか」より先に「どの国の捜査機関を動かせるか」の問題になっているのは、このためである。
配信サービスとの関係
同種のサイトが縮小した時期は、Netflix、U-NEXT、DMM TV、ABEMAといった定額制の配信サービスが日本で広く使われるようになった時期と重なる。規制の強化と正規サービスの普及のどちらがどれだけ効いたのかは切り分けが難しく、評価は分かれている。
はっきり言えるのは、無料で見たいという動機自体は消えていないということである。アニメを検索したときに何が最初に出てくるか、その並びが変わっただけとも読める。漫画の分野で漫画村や星のロミの閉鎖後に起きたことと、構図は同じである。
余談
- サイト名は運営の途中で B9DM から B9GOOD へ変わっているが、閉鎖後も両方の表記が検索語として残った。星のロミやAnitubeと同じで、実体が消えても名前は検索の入口として残り続ける。その入口に何が表示されるかは、もはや元の運営者とは関係がない。
- 閉鎖の直後には、同じ名称を掲げた無関係のサイトや、代替先を紹介するページが多数現れた。この段階で利用者が遭遇する問題の大半は、動画そのものではなく広告枠を経由して表示される偽警告や不正課金の類である。
- CODAは日本の権利者団体としては珍しく、海外当局への働きかけを主要な業務として持つ組織で、本件はその枠組みが刑事判決まで到達した最初の例にあたる。