概要[編集]
漫画BANK(まんがバンク、表記ゆれ:漫画バンク・マンガバンク・mangabank)とは、2019年12月ごろから2021年11月4日まで運営されていた漫画の海賊版サイトである。漫画村の閉鎖後に日本語圏で最大規模とされたサイトで、集英社・講談社・小学館・KADOKAWAの出版4社が米国の裁判所を通じて運営者の特定を進めるなか突然閉鎖され、2022年6月に中国・重慶市在住の運営者が行政処罰を受けた[1]。閉鎖後に旧運営による再開は発表されておらず、2026年現在は存在しないサイトである。
詳細[編集]
規模[編集]
出版社などでつくる一般社団法人ABJの試算によると、開設されていた期間の合計アクセス数は9億9,370万に達し、無断公開された作品をコミックスの販売価格に換算した額は2,082億円相当とされた[1][2]。閉鎖直前の時期には、アクセス解析サービスのSimilarwebで月間8,100万を超える訪問があり、日本国内のウェブサイト全体でも上位50位以内に入る規模だったと報じられている[3]。
この「被害額」は、無断で読まれた分がすべて本来の価格で売れたと仮定して計算した数字であり、算定方法そのものが論点になってきた。無断公開がなければ同じ量が売れていたとみなせるのかという点には異論があり、権利者側は市場の実害を示す指標として、批判する側は過大な見積もりとして扱う。両者が争っているのは事実関係ではなく、換算の前提のほうである。
出版社による対策の経緯[編集]
出版各社は2020年初めごろから、作品の削除要請や、検索エンジンに対するトップページの表示停止要請を続けるとともに、海外の調査会社に依頼して運営者の調査を進めていた[2]。
運営者が国外にいる場合、日本の捜査や削除要請は直接には届かない。そこで出版4社は、サイトが利用していた事業者が米国法人であることを手がかりに、米国の裁判所での手続きを選んだ。主な流れは次のとおり[2]。
- 2021年3月:CDN事業者とクラウド事業者(Cloudflare・Amazon Web Services)を対象に、米国の著作権法(DMCA)に基づく発信者情報開示の手続きを開始。同年4月5日に開示が命じられ、Cloudflareは4月29日、AWSは10月に開示に応じた。
- 2021年10月27日:これらの開示で得た手がかり(サイトのドメインを使ったメールアドレス)をもとに、Googleを対象とする証拠開示(合衆国法典28編1782条)を申し立てた。
- 2021年11月4日:サイトが突然閉鎖。閉鎖時の表示は「サーバー維持費」を理由とするものだった[3]。
- 2021年11月12日:米国の裁判所がGoogleに対する開示を認めた。代理人の弁護士は、申し立てから命令までが異例の早さだったと述べている[2]。
運営者の処罰[編集]
特定された運営者は中国・重慶市に住む男性だった。著作権関連団体のCODA(コンテンツ海外流通促進機構)が中国当局と連携し、2022年6月15日、重慶市の文化市場総合執法総隊が「情報ネットワーク伝達権保護条例」違反として違法収益の没収と罰金の行政処罰を決定、6月21日に地元の区政府のサイトで公表された[1]。罰金の額は公表資料に記載されていない。集英社は他の3社・CODAと協力して侵害行為の全容解明を続け、民事訴訟の提起を含めた対応を検討するとした[1]。
刑事裁判による有罪判決ではなく行政機関による処罰という形だった点が、漫画村の事件との大きな違いである。漫画村では日本国内に運営者がいたため、著作権法違反と組織的犯罪処罰法違反による刑事裁判が成立し、実刑判決と賠償命令まで進んだ。漫画BANKの場合、運営の実体が国外にあったため、日本の法制度だけでは手が届かず、米国の民事手続きと中国の行政手続きを組み合わせる迂回路が必要になった。国境をまたぐ無断公開に対して、どの国のどの手続きが実際に機能するのかという問いは、この事件でも完全には片付いていない。
利用者側の法的な位置づけ[編集]
漫画BANKが稼働していた期間中の2021年1月1日に改正著作権法が施行され、違法にアップロードされたものと知りながら漫画・書籍・論文などをダウンロードする行為も、私的使用目的であっても原則として違法となった。正規版が有償で提供されている著作物を継続的・反復して違法ダウンロードした場合は刑事罰(親告罪)の対象となる[4]。この改正は、漫画村や漫画BANKのような大規模な海賊版サイトの存在が議論のきっかけの一つになったものである。
余談[編集]
- 集英社は処罰確定後の発表で、民事訴訟の提起も含めた対応を検討するとしていた。刑事手続きに乗らない場合でも、金銭的な請求という別の経路が残る。
- 同時期に閉鎖・摘発された同種のサイトは複数あり、名称を少し変えた後継サイトが現れるという繰り返しが続いた。1つのサイトが消えても読者の行動が変わらなければ別のサイトへ移るだけだ、という指摘は海賊版対策の議論で繰り返し出てくる。
- 正規の漫画アプリで話売りと待機型の無料公開が広がったのは、この時期と重なっている。無断公開が持っていた「すぐ読める」という利点を正規側でも満たす方向の変化だが、閉鎖と市場の拡大のどちらが先かを数字だけで切り分けることはできない。
脚注[編集]
- ↑ 1.0 1.1 1.2 1.3 海賊版サイト「漫画BANK」運営者に対する中国当局の処罰について 集英社、2022年7月14日。
- ↑ 2.0 2.1 2.2 2.3 海賊版サイト「漫画BANK」運営者の情報開示、米国裁判所がGoogleに命令 ねとらぼ、2021年11月20日。
- ↑ 3.0 3.1 Shueisha, 3 Other Publishers to Sue Pirate Manga Site Manga Bank Following California Court Decision Anime News Network、2021年11月16日。
- ↑ 令和3年1月1日施行 侵害コンテンツのダウンロード違法化について 文化庁。