概要[編集]
証券取引所とは、株式や債券などの有価証券を売買するための市場を開設・運営する機関のことである。日本では会社法上の株式会社が金融商品取引法に基づく免許を受けて運営しており、東京証券取引所が最大の規模を持つ。
詳細[編集]
日本国内の証券取引所は、東京・名古屋・札幌・福岡の4か所にある。東京と大阪の現物市場は2013年に統合され、現在は日本取引所グループ(JPX)の傘下で、東京が現物株式、大阪がデリバティブ(先物・オプション)を扱う分担になっている。
東京証券取引所は2022年4月に市場区分を見直し、従来の第一部・第二部・マザーズ・JASDAQをプライム、スタンダード、グロースの3区分へ再編した。2026年9月18日時点の上場会社数はプライム1,548社、スタンダード1,562社、グロース599社、TOKYO PRO Market 188社で、合計3,897社である。
取引所の役割[編集]
銀行が預金と貸出を結び付ける場であるのに対し、証券取引所が提供しているものは、しばしば「資金調達の場」と説明されるが、より正確には「売りたい人が買い手を自分で探さなくて済む状態」である。
会社に現金が入るのは新株を発行して売り出す局面だけで、その後の売買は投資家どうしのやり取りにすぎない。株価が上がっても会社の金庫に金は入らない。それでも上場に価値があるのは、いつでも売れるという性質が、最初に出資する側の判断を軽くするためである。出口が用意されているから入口に人が来るという順番になっている。
この「いつでも売れる」を成り立たせているのが、同じ銘柄の売り注文と買い注文が一か所に集まっているという条件である。取引所が担っているのは値段を決めることではなく、値段が決まる場所を一つにまとめることだといえる。
上場審査と情報開示[編集]
取引所は誰でも自由に参加できる場ではなく、上場にあたって株主数・流通株式数・時価総額・企業統治の体制などの基準を満たす審査がある。上場後も決算の開示、重要事実の適時開示、内部管理体制の維持が求められる。
こうした条件が課されるのは、買い手が会社の中身を直接確かめられないためである。店先の商品なら手に取って確認できるが、株式は紙の上の権利であり、確かめられるのは会社が出した情報だけになる。取引所の審査と開示規制は、商品そのものを検査する代わりに「商品の説明が信用できる状態」を作る仕組みにあたる。
この負担は会社の規模に比例しない。ユニクロを擁するファーストリテイリングのような大企業と新興企業とでは、同じ開示義務でも重みがまるで違う。監査報酬や開示要員の費用は売上が10倍でも10倍にはならないため、小さい会社ほど相対的に重くなる。近年、MBOによって上場をやめる企業が現れているのは、換金性の利点より開示と短期の株価対応の負担が重いという判断によるものと説明される。
市場区分をめぐる議論[編集]
2022年の3区分への再編は、旧第一部に業績や規模の面で幅が広がりすぎ、区分が銘柄の性格を示す機能を失っていた(民営化で上場した旧公社系の大企業から新興企業までが同じ区分に並んでいた)ことへの対応とされた。
一方で、基準を満たさない企業に経過措置が設けられたため、区分の意味が実質的に変わったのかについては見方が分かれている。基準を厳しくすれば上場をやめる企業が増えて市場の規模が縮み、緩くすれば区分が意味を持たなくなるという関係があり、どこに線を引くのが適切かは決着した論点とはいえない。
余談[編集]
取引所の建物と実際の取引の場所は、現在では別物である。かつて立会場で人が声と手振りで注文を伝えていたが、東京証券取引所では1999年に立会場が閉鎖され、売買はすべてコンピュータ上で処理されている(5Gや光回線と同じく、表に見える施設と実際の処理の場所が一致しない例といえる)。テレビの報道で映される取引所の映像は、取引が行われている現場ではなく株価を表示する電光掲示板である。
取引所自身も株式会社であり、日本取引所グループは自らが運営する市場に上場している。市場の開設者が市場の参加者でもあるという状態で、自己規制業務を別法人に分けるなどの整理が行われている。