概要[編集]
SNSとは、利用者が自分の発信を公開し、他の利用者とつながって互いの発信を読み合うインターネット上のサービスの総称である。ソーシャル・ネットワーキング・サービスの略で、発信者と受信者が固定されず、誰もが同時に両方を務める点が、新聞や放送といった従来の媒体との根本的な違いになっている。
詳細[編集]
誰が何を見るかを決めているもの[編集]
SNSを使うとき、利用者は自分で見るものを選んでいるように感じる。しかし実際に画面へ並ぶのは、サービス側の仕組みが選んだ順序である。
初期のSNSは、つながった相手の投稿を新しい順に並べるだけだった。参加者が増えると、この方式では読み切れない量になる。そこで「その人が反応しそうなもの」を優先して並べる方式へ移った。この切り替えが効果的だったのは、滞在時間が伸びるためである。ただし、反応が起きやすいものが優先されるということは、強い感情を引き起こす投稿が構造的に有利になるということでもある。
この性質は、運営の意図とは別に生じる。反応の量を基準に並べる限り、静かな投稿より騒がしい投稿が上に来る。SNS上の議論が極端に振れやすいと言われるとき、原因を利用者の気質に求める説明と、並べ方の仕組みに求める説明があり、どちらか一方だけでは説明しきれないとする見方が近年は多い。
日本での位置[編集]
総務省の通信利用動向調査では、2024年のインターネット利用目的のうち「SNSの利用」が81.9%でもっとも多く、検索や買い物を上回っている。利用端末もスマートフォンが中心で、SNSの利用時間の大半は手元の端末で発生している。
主要なサービスは目的ごとに分かれて共存しており、X (SNS)が短文と速報、Instagramが画像、TikTokが短い縦型動画、LINEが連絡手段という形で、それぞれ別の役割を占めている。ひとつのサービスが全てを吸収しなかったのは、扱う情報の形式ごとに読まれ方も書かれ方も違うためである。
広告で成り立っているということ[編集]
大半のSNSは無料で使える。費用は広告が負担しており、電通の推定では2025年の日本のインターネット広告費は4兆459億円、総広告費の50.2%を占めて初めて過半数に達した。
無料であることは参加の障壁を下げる一方、収入が利用時間と表示回数に連動するため、サービス側には「長く使わせる」設計上の動機が常に働く。通知、無限に続く一覧、未読の表示といった仕掛けは、どれも利便性の名目で説明できるが、同時に滞在時間を伸ばす機能でもある。
発信の入口になったこと[編集]
かつては、多くの人に何かを届けるには媒体を通す必要があった。載せるかどうかを決めるのは編集部や放送局であり、そこに選ばれない発信は届かなかった。
SNSは、この関門を外した。誰でも発信でき、反応が集まれば媒体を経由せずに広がる。VTuberや配信者、個人の作り手が事務所や放送局を通さずに知られるようになったのは、この経路が開いたためである。同時に、誰も事前に内容を確かめない仕組みでもあるので、誤った情報も同じ速さで広がる。関門を外したことの利点と欠点は、別々の現象ではなく同じ仕組みの表と裏である。
数字が可視化されたこと[編集]
SNSのもうひとつの特徴は、反応が数字として本人にも他人にも見えることである。フォロワー数、再生数、反応数は、そのまま人物や作品の評価として扱われるようになった。
この可視化は仕事の取引にも影響した。雑誌の誌面に誰を載せるか、企業が誰に依頼するかを決めるとき、かつては編集者や担当者の見立てに頼るしかなかったが、いまは掲載前に見込みを数字で確認できる。視聴率がテレビの取引単位として機能してきたのと同じ役割を、SNSの数字が人単位で担うようになった、と言い換えることもできる。
余談[編集]
「SNS」という略語が日常語として定着しているのは日本を中心とした一部の地域で、英語圏では「ソーシャルメディア」と呼ぶことのほうが多い。同じものを指しているが、前者は人のつながりに、後者は媒体としての性質に重心がある呼び方で、どちらの語を選ぶかでその社会がこれを何だと見ているかがうっすら出る。
投稿が短くなり続けているのは、書き手の忍耐力の問題ではなく、一覧表示の中で最後まで読まれる長さに合わせた結果である。切り抜き動画が長い配信から数分を抜き出す作業として成立しているのも、ピッコマやLINEマンガの縦読み漫画が一話を短く区切っているのも、置かれている条件は同じで、「細切れの時間に手元の画面で読まれる」という前提が形式を決めている。
数字が見えることの副作用として、発信する側が反応の量に合わせて内容を調整するようになる、という指摘もある。VTuberや配信者、グラビアアイドル、タレントのように、仕事の依頼が知名度に直結する職業ほどこの圧力は強く働く。スーパーチャットのように金額まで公開される仕組みでは、応援の度合いまでが数字として比較される。