概要[編集]
日本のSSS合同会社が企画・運営する「東北ずん子・ずんだもんプロジェクト」(略称:ずんずんプロジェクト)に属する架空のキャラクターであり、宮城県の郷土料理であるずんだ餅をモチーフにした東北地方のマスコットキャラクターである。[1] 東北地方の復興支援を目的として誕生した東北ずん子の関連キャラクターとして位置付けられ、コンテンツの展開とともにその設定や役割が深化してきた。キャラクターデザインは江戸村ににこが担当し、声優は伊藤ゆいなが務めている。[2] 2021年以降、音声合成ソフト「VOICEVOX」のリリースを契機に急速に人気を博し、インターネット文化において解説動画や二次創作の素材として広く認知される存在となった。[3]
起源と背景[編集]
ずんだもんは、東日本大震災(2011年3月11日)後の東北地方復興を支援する目的で、SSS合同会社が立ち上げた「東北ずん子プロジェクト」の一環として登場した。<ref>“東北ずん子公式サイト”. SSS合同会社 (2014年4月10日). 2025年3月13日閲覧。</ref> 当初は東北ずん子が持つ武器「ずんだアロー」に変身するずんだ餅の妖精という設定で、マスコット的なデザインが採用された。このプロジェクトは、東北6県(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県)に本社を置く企業が申請なしでキャラクターを商用利用できるという特徴を持ち、地域振興とキャラクター文化の融合を目指している。ずんだもんは、東北ずん子の相棒として、ゆるキャラ的な親しみやすさを備えつつ、東北の食文化であるずんだ餅を象徴する存在として設計された。 キャラクターの名前「ずんだもん」は、宮城県を中心に東北地方で親しまれる「ずんだ餅」に由来する。ずんだ餅は、枝豆をすり潰して作る緑色の餡を用いた和菓子であり、その独特の風味と鮮やかな色合いがずんだもんのビジュアルに反映されている。また、「もん」という語尾は、日本の妖怪や妖精を思わせる親しみやすい響きを持ち、キャラクターに愛嬌を与えている。
キャラクター設定[編集]
ずんだもんの公式設定によれば、彼女(公式には性別は女の子とされているが、二次創作では自由に解釈可能)は東北ずん子が所持する弓「ずんだアロー」に変身する能力を持つ妖精である。ずんだ餅を食べることで知性が向上するというユニークな特性を持ち、ずんだ餅作りを得意とする東北ずん子との相性の良さが強調されている。外見は、緑色の髪と枝豆を模した耳が特徴的で、丸みを帯びたマスコット形態(通称「原型ずんだもん」)と、2021年6月に発表された人間形態の2つの姿を持つ。中性的な容姿と一人称「ボク」、語尾に「なのだ」を付ける独特の口調が、ファンに愛される要素となっている。 また、公式プロフィールには「不幸属性」が付与されており、無茶ぶりされたり周囲に振り回されたりする不憫なキャラクターとして描かれることが多い。この設定は、二次創作においても「いじられキャラ」として反映され、視聴者やクリエイターの共感やユーモアを誘う要因となっている。
メディア展開と音声合成ソフト[編集]
ずんだもんの知名度が飛躍的に向上したきっかけは、2021年8月1日にリリースされた無料の音声合成ソフト「VOICEVOX」である。[4] このソフトは、商用・非商用を問わず無償で利用可能な点が特徴で、伊藤ゆいなの声を基にしたずんだもんの音声ライブラリが初期実装された。これにより、YouTubeやニコニコ動画などのプラットフォームで、ずんだもんの声を使用した解説動画や実況動画が急増。従来の「ゆっくり解説」(東方Projectの博麗霊夢と霧雨魔理沙を用いたもの)に代わる存在として注目を集めた。 さらに、2022年8月には歌声合成ソフト「NEUTRINO」の音声ライブラリが公開され、[5] 同年11月には「Seiren Voice ずんだもん」が発売。[6] 2023年には「VOICEPEAK 東北ずん子」などの関連ソフトに付属する形で「VOICEPEAK ずんだもん」が提供された。[7] これらの展開により、ずんだもんはトークだけでなく歌唱も可能なマルチメディアキャラクターとしての地位を確立した。 アニメーション作品では、2017年に公開された「ずんだホライずん」に登場し、東北ずん子や他の関連キャラクターとともに活躍。[8] また、2023年10月からは「まんがタイムきららキャラット」にて、卯匡による4コマ漫画「ずんだもんTV!」が連載開始。[9] 記憶喪失のずんだもんが動画配信を通じて手がかりを探す物語が展開され、主人公としての新たな一面が描かれている。
人気の要因[編集]
ずんだもんがインターネット上で人気を博した理由は多岐にわたる。第一に、「VOICEVOX」の無料提供が大きい。これまでの音声合成ソフト(例:VOICEROIDやAquesTalk)は有料であるか収益化にライセンスが必要だったのに対し、ずんだもんはコストゼロで利用可能であり、クリエイターの参入障壁を大幅に下げた。第二に、キャラクターのデザインと声の魅力が挙げられる。伊藤ゆいなの自然で可愛らしい声質と、「なのだ」という語尾が織りなす中毒性のある話し方は、視聴者に強い印象を残す。また、マスコット形態と人間形態の両方で展開される柔軟性も、二次創作の幅を広げた。 第三に、東北ずん子・ずんだもんプロジェクトの寛容な利用規約が影響している。東北地方の企業や復興支援を目的とする場合に限り、無償かつ申請なしで商用利用が可能なほか、非商用利用においては個人クリエイターが自由にキャラクターを活用できる。この方針は、ファンコミュニティの拡大とコンテンツの多様化を促進した。ただし、特定の個人や団体への誹謗中傷、政治・宗教への利用、キャラクターイメージを損なう使用は禁止されており、公式がガイドライン遵守を呼びかける場面も見られる。[10]
文化的影響と評価[編集]
ずんだもんは、2022年の「ネット流行語100」で7位にランクインし、ニコニコ賞を受賞するなど、インターネット文化における存在感を示した。[11] また、2023年にはYouTube流行語大賞のノミネートワードに選出され、企業や行政(例:デジタル庁のマイナンバー関連動画)にも起用されるなど、社会的認知度も向上している。 一方で、自由度の高い利用規約ゆえに、陰謀論やヘイトスピーチを含む問題動画に使用されるケースも発生。これに対し、公式は2023年10月に注意喚起を行い、東北復興という原点を強調した。[12] ファンコミュニティはこの対応を支持しつゝ、キャラクターの健全な活用を求める声が広がっている。
関連商品と今後の展望[編集]
ずんだもんはフィギュア(例:「POP UP PARADE ずんだもん」)やプラモデル(「プラフィア ずんだもん」)、VTube Studio用モデルなど、多様なグッズとしても展開されている。また、東北ずん子とともに地域振興イベントやコラボ商品(例:ロッテ「紗々 ずんだシェイク味」[13])に登場し、東北の食文化発信に貢献している。 今後、ずんだもんは「ずんだホライずん」第2弾の制作やさらなる音声合成技術の進化を通じて、国内外での展開が期待されている。東北の象徴として、またデジタル文化のアイコンとして、その影響力はますます拡大するだろう。
脚注[編集]
- ↑ “東北ずん子・ずんだもん公式サイト”. SSS合同会社. 2025年3月13日閲覧。
- ↑ “伊藤ゆいな公式Twitter” (2021年). 2025年3月13日閲覧。
- ↑ “VOICEVOX公式サイト”. Hiho (2021年8月1日). 2025年3月13日閲覧。
- ↑ “VOICEVOXリリース告知”. Hiho (2021年8月1日). 2025年3月13日閲覧。
- ↑ “NEUTRINO音声ライブラリ公開” (2022年8月). 2025年3月13日閲覧。
- ↑ “Seiren Voice発売情報”. AH-Software (2022年11月). 2025年3月13日閲覧。
- ↑ “VOICEPEAK東北ずん子発売”. AH-Software (2023年1月). 2025年3月13日閲覧。
- ↑ “アニメたまご2017選定資料”. SSS合同会社 (2016年6月). 2025年3月13日閲覧。
- ↑ “まんがタイムきららキャラット 2023年10月号” (2023年10月). 2025年3月13日閲覧。
- ↑ “東北ずん子公式Twitter 注意喚起” (2023年10月). 2025年3月13日閲覧。
- ↑ “ネット流行語100 2022”. ニコニコ (2022年12月). 2025年3月13日閲覧。
- ↑ “東北ずん子公式Twitter 注意喚起” (2023年10月). 2025年3月13日閲覧。
- ↑ “コラボレーションで東北ずん子ちゃん・ずんだもんと一緒に!枝豆の風味と優しいミルク感「紗々[ずんだシェイク]」”. ロッテ (2023年6月15日). 2025年3月13日閲覧。
外部リンク[編集]
- 東北ずん子・ずんだもん公式サイト - SSS合同会社が運営する公式ページ。キャラクターの設定や利用規約が掲載されている。
- VOICEVOX公式サイト - ずんだもんの音声合成ソフト「VOICEVOX」のダウンロードと詳細情報。
- ずんだホライずん公式ページ - アニメ作品「ずんだホライずん」の情報。
- 伊藤ゆいな公式X - ずんだもんの声優である伊藤ゆいなの公式Xアカウント。
- NEUTRINO公式サイト - ずんだもんの歌声合成ライブラリが提供されているサイト。
- まんがタイムきららキャラット公式 - 「ずんだもんTV!」の連載情報。