警告: このページの古い版を編集しています。 公開すると、この版以降になされた変更がすべて失われます。※ ログインしていません。編集を行うと、あなたのIPアドレスが公開されます。ログインまたはアカウントを作成すれば、あなたの編集はその利用者名とともに表示されるほか、さまざまなメリットもあります。スパム攻撃防止用のチェックです。 決して、ここには、値の入力はしないでください!{{Elementbox |name=oxygen |japanese name=酸素 |number=8 |symbol=O |pronounce={{IPAc-en|ˈ|ɒ|k|s|ɨ|dʒ|ɨ|n}} {{respell|OK|si-jin}}<!--no need for US vs. UK. they're the same thing.--> |left=[[窒素]] |right=[[フッ素]] |above=- |below=[[硫黄|S]] |series=非金属 |series 2=[[カルコゲン]] |group=16 |period=2 |block=p |series color= |phase color= |appearance=無色の気体<ref name="sakurai64">[[#桜井|桜井 (1997)]]、64頁。</ref>(液体は淡青色) |image name=Liquid oxygen in a beaker 4.jpg |image alt= |image size=150px |image name comment=沸騰している[[液体酸素]](酸素の沸点は{{abbr|1 atm|気圧101.325 kPa}}で約−183 {{℃}} (−297 {{°F}}))。 |image name 2=Oxygen spectre.jpg |image name 2 comment=酸素のスペクトル線 |atomic mass=15.9994 |atomic mass 2=3 |atomic mass comment= |electron configuration=1s{{sup|2}} 2s{{sup|2}} 2p{{sup|4}} |electrons per shell=2, 6 |color=無色<ref name="sakurai64" /> |phase=気体 |phase comment= |density gplstp=1.429<ref name="Newton96">[[#ニュートン|玉尾、桜井、福山 (2010)]]、96-97頁。</ref> |density= |density gpcm3nrt 2= |density gpcm3mp= |density gpcm3bp=1.141 |melting point K=54.8<ref name="sakurai64" /> |melting point C=−218.8<ref name="sakurai64" /><ref name="Newton96" /> |melting point F=−361.82 |boiling point K=90.2<ref name="sakurai64" /> |boiling point C=−182.96<ref name="Newton96" /> |boiling point F=−297.31 |triple point K= |triple point kPa= |critical point K=154.59 |critical point MPa=5.043 |heat fusion=(O{{sub|2}}) 0.444 |heat fusion 2= |heat vaporization=(O{{sub|2}}) 6.82 |heat capacity=(O{{sub|2}}) 29.378 |vapor pressure 1= |vapor pressure 10= |vapor pressure 100= |vapor pressure 1 k=61 |vapor pressure 10 k=73 |vapor pressure 100 k=90 |vapor pressure comment= |crystal structure=cubic |japanese crystal structure=[[立方晶系]] |oxidation states=2, 1, −1, '''−2''' |oxidation states comment= |electronegativity=3.44 |number of ionization energies=4 |1st 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sym=O | na=0.039% | n=9}} {{Elementbox_isotopes_stable | mn=[[酸素18|18]] | sym=O | na=0.201% | n=10}} |isotopes comment= }} '''酸素'''(さんそ、{{lang-en-short|oxygen}}、{{lang-la-short|oxygenium}}、{{lang-fr-short|oxygène}}、{{lang-de-short|Sauerstoff}})は、[[原子番号]]8の[[元素]]である。[[元素記号]]は'''O'''。[[原子量]]は15.9994。[[第16族元素]]、[[第2周期元素]]のひとつ。 ==名称== [[Image:UtagawaYoan.jpg|thumb|200px|宇田川榕庵]] [[スウェーデン]]の[[化学者]][[カール・ヴィルヘルム・シェーレ]]が[[1771年]]に初めて見つけた<ref name="sakurai64" />。しかし、これはすぐに公にされず、その後[[1774年]]に[[イギリス]]の化学者[[ジョゼフ・プリーストリー]]がそれとは独立して見つけたあとに広く知られるようになった<ref name="sakurai64-65">[[#桜井|桜井 (1997)]]、64-65頁。</ref>。そのため、化学史上の発見者はプリーストリーとされている<ref name="sakurai65">[[#桜井|桜井 (1997)]]、65頁。</ref>。 「酸素」という名称は、[[フランス]]の化学者[[アントワーヌ・ラヴォアジエ]]が『[[酸化剤]]({{lang-en|oxidizing agent}})には、必ず同じ[[元素]]が含まれている』という[[学説]]を提唱し、その元素を「{{lang-fr-short|'''oxygène'''}}」と命名したことに由来する{{sfn|万有百科大事典|1974|p=642}}。[[英語]]でも「'''oxygen'''(オキシジェンまたはオクスジン)」<!--、蘭語でも「'''zuurstof'''(ズールストッフ)」-->といい、[[日本語]]でもこれらを[[宇田川榕菴]]が直訳して「'''酸素'''」と呼んだ。 一方、[[中国語圏]]では「酸」という字を用いず、「'''氧'''」(中国語読み:ヤン、[[ピンイン]]:yǎng)という字をあて、日本語読みでは'''氧'''(よう)や'''氧氣'''(ようき)という。[[韓国]]では日本語と中国語の名称が混用されたが、日本語の名称が定着した。(ハングル表記:'''산소'''、韓国語読み:サンソ) == 性質 == [[電気陰性度]]が大きいため反応性に富み、ほかのほとんどの元素と[[化合物]](特に[[酸化物]])を作る。[[標準状態]]では2個の酸素原子が[[二重結合]]した無味無臭無色透明の[[二原子分子]]である酸素分子'''O{{sub|2}}'''として存在する。 === 物理的性質 === 約{{Val|90|ul=K}}で液体、約{{Val|54|u=K}}で青みがかった固体となる。[[ダイヤモンドアンビルセル]]などで100万[[標準気圧|気圧]]を超えた高圧下では金属光沢を持ち、125万気圧、{{Val|0.6|u=K}}では[[超伝導体|超伝導金属]]となる。 === 化学的性質 === 酸素は、[[フッ素]]に次いで2番目に[[電気陰性度]]が大きい<ref name="sakurai33">[[#桜井|桜井 (1997)]]、33頁。</ref>ため[[酸化力]]が強く、ほとんどの元素と[[発熱反応]]を起こして[[化合物]]を作る<ref name="Lee241">[[#リー|リー (1982)]]、241頁。</ref>。1962年以降には[[希ガス]]である[[キセノン]]も、酸素と化合して[[三酸化キセノン]]({{Chem2|XeO3}})などの化合物を作ることがわかった<ref name="Lee292">[[#リー|リー (1982)]]、292頁。</ref>。 == 分布 == [[宇宙]]では[[水素]]、[[ヘリウム]]に次いで3番目に多くの質量を占め<ref name="NBB297">[[#Emsley|Emsley (2001)]].</ref>、ケイ素量を10{{sup|6}}としたときの比率は{{val|2.38|e=7}}である<ref name="NewtonTable">[[#ニュートン|玉尾、桜井、福山 (2010)]]、付録周期表。</ref>。 地球地殻においては最大を占める元素(質量の{{Val|46.60|u=%}}、体積の{{Val|93.77|u=%}})であり{{efn2|質量においては[[ケイ素]]が次点であり、地殻の27.72 %を占める(ケイ素の[[イオン半径]]は酸素の3分の1以下であるため、体積は地殻の0.86 %である){{sfn|酒井|2003|pp=48-49}}。}}、[[石英]]の成分である[[二酸化ケイ素|SiO{{sub|2}}]]が地殻の大部分を構成している{{sfn|酒井|2003|pp=48-49}}{{efn2|地殻の[[造岩鉱物]]の92 %はSiO{{sub|4}}の四面体を結晶構造の基本単位とする[[珪酸塩鉱物]]である{{sfn|酒井|2003|pp=48-49}}。}}。気体の酸素分子は[[大気]]の体積の20.95 %<ref name="ECE500">[[#Cook|Cook & Lauer (1968)]].</ref>、質量で{{Val|23|u=%}}を占める<ref name="sakurai64" />。 地球外でも酸素は多く存在している。おもな存在形態である[[氷]]は地球のほか、[[惑星]]や、[[彗星]]、[[小惑星]]などにも見られる{{要出典|date=2021年3月}}。[[火星]]においては、[[火星の大気|大気]]組成の{{Val|95|u=%}}を[[二酸化炭素]]が占める{{efn2|酸素分子は0.1–0.3 %、水は0.03 %{{sfn|酒井|2003|p=5}}。}}ほか、二酸化炭素([[ドライアイス]])やごく少量の[[水]]が[[氷]]として両極の[[氷床]](氷冠)に存在している{{sfn|酒井|2003|pp=5 & 17}}。星が生まれる元となる[[分子雲]]では、[[一酸化炭素]]が分子の中で2番目に存在量の多い分子である。酸素の起源は恒星核における[[ヘリウム]]の核融合であり、酸素のスペクトルが検出される恒星も存在している{{要出典|date=2021年3月}}。 === 地球大気成分中の酸素形成 === [[ファイル:Oxygenation-atm.svg|thumb|300px|地球大気における酸素含有量の変遷。<span style="color:darkred">赤線</span>は推定の上限値、<span style="color:green">緑線</span>は下限値を示す。1. 酸素が作られない期間 2. 酸素生成が始まるが海水や海底岩石に吸収される 3. 海洋から酸素ガスが放出されるが地表への吸収やオゾン層形成のため消費される期間 4, 5. 酸素吸収が飽和し大気中に溜まる]] [[ファイル:OxygenLevel-1000ma.svg|thumb|300px|過去10億年の大気中の酸素濃度の変化]] 地球誕生初期の原始大気に含まれていた硫酸や塩酸は、原始海洋中で地殻中の金属イオンで中和され、原始大気は高温高圧の二酸化炭素や水蒸気、窒素が主成分だったと考えられる。これは海洋に溶けこんだ硫酸を除いて現在の[[金星]]の大気と似ていたとする説がある。この原始大気中には分圧で示されるほどの酸素は存在せず、熱や光で分解して発生するわずかな遊離酸素は一酸化炭素や地殻に露出した還元金属の酸化で消費され、分圧の高い二酸化炭素が海洋中に溶存していた。これを材料に30億年前ごろに[[光合成]]を獲得した[[シアノバクテリア]]が現れて酸素が作られ始めた<ref name="Chikyu" />とされているが、近年{{いつ|date=2025年5月}}の遺伝子解析の結果から、進化の過程で光合成機能を失う細菌もいたことをうかがわせる結果が出ており、初期の光合成による大気への酸素供給は必ずしも安定にはできていなかった可能性が指摘されている。シアノバクテリアが大規模に存在して安定した酸素供給ができていた確実な証拠となる[[ストロマトライト]]の最古の化石は、現在までに約27億年前のものが見つかっている。こうした安定した光合成は、同時期に大規模な[[大陸]]変動によって生じた浅瀬のような環境で可能になったと考えられている<ref name="mito19-21" />。 大気中の酸素分圧は24億5000年前ごろから高くなっていったと推定されており、このことは、海水中の2価の溶解鉄と化合して生じた酸化鉄を起源とする[[縞状鉄鉱床]]の形成時期と一致している。こうして{{ill2|大酸化イベント|en|Great Oxidation Event}}({{仮リンク|酸素の大量発生|en|oxygen catastrophe}}、酸素大発生)が起こった期間、ほかの元素と結合していない多くの遊離酸素が海中や大気中に溢れることとなり、また海洋中の二酸化炭素の消費に伴って大気中の二酸化炭素も減少した。これが、[[嫌気性生物]]を酸化して死滅させ、[[全球凍結]]に至るほどまで気温が急激に下がったために、シアノバクテリアを含む全生物相の深刻な[[大量絶滅]]も引き起こされたと考えられている([[ヒューロニアン氷期]])。氷期からの回復までに海洋中の酸素濃度は一時的に下がったとされる。しかし、生き延びた[[単細胞生物]]の中で、酸素を用いる効率的な[[細胞呼吸]]と、酸素により自らを酸化させない[[抗酸化物質]]を獲得した[[好気性生物]]はより多くのATPを作り出せるようになり、その後の地球に新たな[[生物圏]]を形成した<ref name="Freeman">{{cite book|last = Freeman| first = Scott|title = Biological Science, 2nd|publisher = Prentice Hall |year=2005|location = Upper Saddle River|pages = 214, 586|isbn = 0-13-140941-7}}</ref>。この光合成と酸素呼吸は[[真核生物]]、さらに[[多細胞生物]]への進化をもたらし、これが植物や動物などの[[生物多様性]]を生むに至る第一歩となった。 酸素の消費源であった海洋中の溶存鉄が尽きると次第に酸素ガスが海洋から大気に溢れ始め、約17億年前には大気中の酸素含有比率は{{Val|10|u=%}}に達した<ref name="Campbell">{{cite book|last = Campbell|first = Neil A.|coauthors = Reece, Jane B.|title = Biology|edition=7th|publisher = Pearson - Benjamin Cummings |year=2005|location = San Francisco|pages = 522-523|isbn = 0-8053-7171-0}}</ref>。酸素の比率が逆転したのは7–8億年前と考えられる<ref name="Chikyu" />。 5億4000万年前の[[カンブリア紀]]が始まったころからは、大気中の酸素比率は{{Val|15|-|30|u=%}}の間で推移した<ref name="Chikyu"/>。それは[[石炭紀]]の終わりにあたる3億年前ごろには最大{{Val|35|u=%}}まで達し<ref name="Chikyu"/>、昆虫や両生類の大型化に作用した可能性がある<ref name="Chikyu"/>。石炭紀には木材の[[リグニン]]を分解できる[[菌類]]が十分に進化しておらず、森林の繁栄により大量の炭素が[[石炭]]として固定化され、[[ペルム紀]]初期の[[地球の大気|大気]]中の酸素濃度は35 %に達したといわれる。また、植物が繁栄したことで大量の[[二酸化炭素]]が吸収され、その多くが大気中に還元されずに石炭化していったため、またしても大気中の二酸化炭素濃度が激減した。これがその後の寒冷化と氷河の発達、ひいては[[氷河時代]]の一因とされる。その後、寒冷化による植物の炭素固定能の減退、およびリグニンの分解能を獲得した菌類が増えたことなどから、[[ジュラ紀]]後期の2億年前には酸素濃度は{{Val|12|u=%}}まで低下した。ジュラ紀後期から[[白亜紀]]を通じて酸素濃度は次第に増加した<ref name="ha">長谷川政美、「系統樹をさかのぼって見えてくる進化の歴史」p102ほか、2014年10月25日、ベレ出版、ISBN 978-4-86064-410-9</ref>。現在の酸素濃度は{{Val|21|u=%}}である。人類は年間70億トンの[[化石燃料]]を使用するにあたり酸素を消費し続けているが、これによる大気中の酸素比率に与える影響は微々たるものである<ref name="NBB303"/>。 一方、太陽の進化により、約10億年後を境に大気中の酸素濃度は急激に低下し、酸素呼吸を行う多細胞生物の生存は困難になるとする予測がある<ref>[https://www.toho-u.ac.jp/press/2020_index/20210302-1122.html 酸素に富む地球環境の持続期間は約10億年] [[東邦大学]]</ref>。 == 酸素分子 == === 物理的性質 === 酸素分子({{lang-en-short|dioxygen}}、[[化学式]]:{{Chem2|O2}}は、常温常圧では無色無臭で助燃性をもつ[[気体]]として存在する。[[分子量]]32.00、[[沸点]]{{Convert|−183|C|K}}、[[融点]]{{Convert|-218.9|C|K}}。水{{Val|100|ul=g}}に溶解する量は0 °Cで6.945 mg、25 °Cで3.931 mg、50 °Cで2.657 mg<ref name="kagaku" />。[[液体酸素]]は淡青色を示し、比重は1.14である<ref name="kagaku" />。[[基底状態]]の三重項状態では[[不対電子]]を持つため[[常磁性|常磁性体]]である。また[[活性酸素]]の一種で[[反磁性]]である[[励起状態]]の[[一重項酸素]]も存在する。 === 構造 === [[ファイル:8 oxygen (O) Bohr model.png|thumb|酸素の原子模型図。原子の手が8つある]][[標準状態]]において一般の<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.nsc.nagoya-cu.ac.jp/scicafe/report20080314.html|title=βカロチンの活性酸素消去能力を測る|publisher = [[名古屋大学]]|accessdate =2010-05-28|archiveurl=https://web.archive.org/web/20091113034151/http://www.nsc.nagoya-cu.ac.jp/scicafe/report20080314.html|archivedate=2009-11-13}}</ref>酸素は、2つの酸素原子が縮退した[[三重項]]の電子配置で[[化学結合]]した分子構造([[三重項酸素]]分子)を持つ無色無臭の気体である。この[[結合次数]]は2であり、一般に[[二重結合]]<ref>{{cite web|url=https://chemed.chem.purdue.edu/genchem/topicreview/bp/ch8/mo.html#bond|title=Molecular Orbital Theory|publisher = Purdue University|accessdate =2008-01-28}}</ref>、または1個の2電子結合と2個の3電子結合と表記される<ref name="pauling">{{cite book |title=The nature of the chemical bond and the structure of molecules and crystals : an introduction to modern structural chemistry |author=Pauling, L. |year=1960 |publisher=Cornell University Press |location=Ithaca|edition=3rd}}</ref>。三重項酸素分子とは電子の全スピン量子数が1となる状態で、具体的には2つの[[不対電子]]が酸素分子に2つあるπ{{sup|*}}[[反結合性軌道]]<ref>{{Cite web|和書|url=http://mole.rc.kyushu-u.ac.jp/~fuchita/ChemicalBonding/12th/Note12.pdf|format=PDF|language=日本語|title=第15章 分子の形成と性質|author=淵田吉男 |publisher=[[九州大学]]高等教育総合開発研究センター|accessdate=2010-05-28|archiveurl=https://web.archive.org/web/20120115021240/http://mole.rc.kyushu-u.ac.jp/~fuchita/ChemicalBonding/12th/Note12.pdf|archivedate=2012-01-15}}</ref>をひとつずつ占め、しかも同じ向きのスピンを取っている<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.pharm.or.jp/words/word00488.html|language=日本語|title=薬学用語解説【三重項酸素】|author= |publisher=財団法人日本薬学会|accessdate=2010-05-28}}</ref>。このとき、酸素分子のエネルギーは基底状態にある<ref name="BiochemOnline">{{cite web|title = Biochemistry Online|url = https://employees.csbsju.edu/hjakubowski/classes/ch331/bcintro/default.html| chapterurl=https://employees.csbsju.edu/hjakubowski/classes/ch331/oxphos/oldioxygenchem.html |chapter=Chapter 8: Oxidation-Phosphorylation, the Chemistry of Di-Oxygen|first=Henry|last=Jakubowski|accessdate=2008-01-28|publisher=Saint John's University}}</ref>。また、酸素分子の二重結合は反結合軌道にも電子が存在するため、結合軌道のみで電子を充足させる三重結合の[[窒素]]よりも安定さは下がり、また、2つの電子が対を作らず[[ビラジカル]]として存在するため、結果として酸素分子は窒素分子よりも少ないエネルギーでほかの物質と反応しやすくなる<ref name="BiochemOnline"/><ref>{{Cite web|和書|url=http://www.sugalab.mp.es.osaka-u.ac.jp/~sekiyama/PES1/kaisetu2_1.html|language=日本語|title=物性物理超入門編 電子とイオン結合と共有結合|author=関山明 |publisher=[[大阪大学]]大学院基礎工学研究科|accessdate=2010-05-28}}</ref>。 通常の三重項酸素分子は[[常磁性]]を持つ。これは、不対電子のスピン磁気モーメント(スピンの向きが同じ電子がπ*反結合性軌道に入る<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.nuee.nagoya-u.ac.jp/labs/nakazatolab/nakazato/LsseeA1.pdf|format=PDF|language=日本語|title=第1回演習問題|author=中里和郎|publisher=[[名古屋大学]]大学院工学研究科|accessdate=2010-05-28}}</ref>)とふたつの酸素分子間に働く[[交換相互作用]]による<ref name="NBB303"/>。液体酸素は磁石に吸いつけられ、実験では磁極間で自重を支えるに充分強い橋を作るほどである<ref>{{cite web|url = http://genchem.chem.wisc.edu/demonstrations/Gen_Chem_Pages/0809bondingpage/liquid_oxygen.htm|title = Demonstration of a bridge of liquid oxygen supported against its own weight between the poles of a powerful magnet|publisher = University of Wisconsin-Madison Chemistry Department Demonstration lab| accessdate = 2007-12-15}}</ref><ref>Oxygen's paramagnetism can be used analytically in paramagnetic oxygen gas analysers that determine the purity of gaseous oxygen. ({{cite web|url = http://www.servomex.com/oxygen_gas_analyser.html|title = Company literature of Oxygen analyzers (triplet)|publisher = Servomex|accessdate = 2007-12-15}})</ref>。 これに対し、外部から高エネルギーが加わり不対電子のひとつがスピンを逆方向へ変え<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.nsc.nagoya-cu.ac.jp/~watanabe/activeo.html |language=日本語|title=活性酸素|author=渡邉準 |publisher=[[名古屋大学]]システム自然科学研究科|accessdate=2010-05-28}}</ref>、全スピン量子数が0となった酸素を[[一重項酸素]]といい、[[有機化合物]]との反応性が高い。自然界で一重項酸素は、光合成の過程で水から作られたり<ref>{{cite journal|first=Anja|last=Krieger-Liszkay |accessdate=2007-12-16|journal=Journal of Experimental Botanics|year=2005|volume=56|publisher=Oxford Journals|pages=337-46|published=2004-10-13|title=Singlet oxygen production in photosynthesis|doi=10.1093/jxb/erh237|pmid=15310815|issue=411}}</ref>、[[対流圏]]で短波長の光によって[[オゾン]]の分解から発生したり<ref name="harrison">{{cite book|last=Harrison |first=Roy M.|year=1990|title=Pollution: Causes, Effects & Control|edition=2nd |location=Cambridge|publisher=[[王立化学会|Royal Society of Chemistry]]|isbn=0-85186-283-7}}</ref>、または免疫システムの中で[[活性酸素]]の原料として用いられたりする<ref name="immune-ozone">{{cite journal|journal=Science|title=Evidence for Antibody-Catalyzed Ozone Formation in Bacterial Killing and Inflammation|year=2002|volume=298|issue=5601|pages=2195-2219|doi=10.1126/science.1077642|author=Wentworth, Paul Jr. ''et al.''|pmid=12434011}}</ref>。 === その他の特徴 === [[熱力学]]的に反応性が高く不安定な分子ではあるが、地球上では初期には[[光合成]]を行う[[嫌気性生物|嫌気性菌]]により、のちの時代には[[植物]]の光合成によって年間約10{{sup|11}}トン<ref name="sakurai65" />供給され続けているため多量に存在する。[[酸素呼吸]]を行う生物によって消費される。実際、生命が発生する以前の原始大気では酸素分子はほとんど存在せず、二酸化炭素などほかの原子と結合した状態であった。現在の大気中の酸素分子はそのほぼすべてが光合成由来だと考えられている<ref name="Chikyu">{{Cite book|和書|author=A・オレイニコフ|year=1978|edition=第一刷|title=地球時計|chapter=I. 地球進化を探る 3.地球大気の形成|pages=21-35|publisher=[[講談社]] |isbn=}}</ref>{{#tag:ref|原初の地球大気にも、水蒸気が光分解されて発生するメカニズムが指摘されており、ごく微量ながら酸素ガスが存在した可能性はあるが、ほとんどはすぐ酸化反応で消費されるか、オゾンへ変化したものと思われ、いずれにしろ考慮に足る量ではなかった<ref>オレイニコフ (1978)、31頁。</ref>。|group="注"}}。逆に、ほかの天体の大気中に遊離酸素の存在が確認されれば、生命の存在する間接的証拠となると考えられており、[[太陽系外惑星]]の大気組成の[[太陽系外惑星の発見方法|トランジット分光法]]による観測が行われている。 酸素は、[[呼吸]]をする生物によっては必須であるが、同時に有害でもある<ref name="mito19-21">[[#瀬名ら|瀬名、太田 (2000)]]、19-21頁。</ref>。呼吸の過程や光反応などで生じる[[活性酸素]]は、[[デオキシリボ核酸|DNA]]などの生体構成分子を[[酸化]]して変性させる<ref name="mito31-35">[[#瀬名ら|瀬名、太田 (2000)]]、31-35頁。</ref>。純酸素の長時間吸引は生体にとって有害である。[[未熟児網膜症]]の原因になったり、{{Val|60|u=%}}以上の高濃度酸素を12時間以上吸引すると、[[肺]]の充血などがみられ、最悪の場合、失明や死亡する危険性がある。 25 °Cで[[標準気圧]]下では、淡水は{{Val|1|ul=L}}中に酸素を{{Val|6.04|ul=mL}}含んでいるが、[[海水]]では{{Val|1|u=L}}あたり{{Val|4.95|u=mL}}しか含んでいない<ref>{{cite book|title = The Physiology of Fishes |first=David Hudson |last=Evans |coauthors=Claiborne, James B.|pages=88|year=2006|publisher=CRC Press|isbn=0-8493-2022-4}}</ref>。{{Val|5|u=degC}}での溶解度は、淡水では{{Val|9.0|u=mL|up=L}}、海水では{{Val|7.2|u=mL|up=L}}まで増加している。 液体酸素は液体空気を分留して得られ、強い酸化剤である<ref name="kagaku" />。液体空気を放置すると、沸点の低い窒素が先に蒸発するため、酸素分子が濃縮される<ref name="kagaku" />。{{Val|1|u=L}}の液化酸素が気化すると約{{Val|800|u=L}}の酸素ガスになる。 酸素は[[紫外線]]や[[無声放電]]などによって[[オゾン]] {{Chem2|O3}}へと変換される。また、酸素分子のイオンとして[[スーパーオキシドアニオン]] {{Chem2|O2-}}と[[ジオキシゲニル]] {{Chem2|O2+}}が知られている。 == 生物学的役割 == === 光合成と呼吸 === [[ファイル:Simple photosynthesis overview-ja.svg|thumb|光合成は水を分解し、酸素を放出して水素を二酸化炭素と反応させて糖類を得る過程である]] 自然界において遊離酸素は、[[光合成]]によって水が[[光分解]]されることで生じ、海洋中の[[緑藻]]類や[[シアノバクテリア]]が地球大気中の酸素70 %を、残りは陸上の植物が作り出している<ref>{{cite book|url=https://books.google.co.jp/books?id=g6RfkqCUQyQC&pg=PA147&redir_esc=y&hl=ja|title=Plants: the potentials for extracting protein, medicines, and other useful chemicals (workshop proceedings)|year=1983|month=September|chapter=Marine Plants: A Unique and Unexplored Resource|last=Fenical|first=William|page=147|isbn=1428923977|publisher=DIANE Publishing}}</ref>。 簡易な光合成の反応式は以下の通りである<ref>{{cite book|last=Brown|first=Theodore L. |coauthors=LeMay, Burslen|title=Chemistry: The Central Science|isbn=0130484504|page=958|year=2003|publisher=Prentice Hall/Pearson Education}}</ref>。 :<chem>6CO2 + 6H2O +</chem> [[光子]] <chem> -> C6H12O6 + 6O2</chem> (二酸化炭素+水+日光 → グルコース+酸素) 光分解による酸素発生は[[葉緑体]]の[[チラコイド|チラコイド膜]]中で起こる。光をエネルギーとするこの作用は多くの段階を経て、[[アデノシン三リン酸|ATP]] を[[光リン酸化]]([[:en:photophosphorylation|photophosphorylation]])させる[[水素イオン|プロトン]]の濃度勾配を起こす<ref name="Raven">[[#Reference-idRaven2005|Raven (2005)]], pp. 115-127.</ref>。この際、水を酸化することで酸素ガスが発生し、大気中に放出される<ref>Raven 2005</ref>。 酸素ガスは[[好気性生物]]が[[呼吸]]を行い、[[ミトコンドリア]]で[[酸化的リン酸化]]反応を経てATPを発生させるために使われる。酸素呼吸の反応は本質的に光合成の逆である。 : <chem>C6H12O6 + 6O2 -> 6CO2 + 6H2O + </chem><math>2880\,\mathrm{kJ\, mol^{-1}}</math> [[脊椎動物]]では酸素ガスは肺の膜を通して[[血液]]中に拡散し[[赤血球]]中の[[ヘモグロビン]]と結びつき、その色を紫がかった赤から明るい赤へ変える<ref name="sakurai68">[[#桜井|桜井 (1997)]]、68頁。</ref><ref name="GuideElem48">{{cite book|title=Guide to the Elements|edition=revised |first=Albert|last=Stwertka|publisher=Oxford University Press|year=1998|isbn=0-19-508083-1|pages=48-49}}</ref>。ほかの動物では[[ヘモシアニン]]([[軟体動物]]や[[節足動物]]の一種など)や[[ヘムエリスリン]]([[クモ]]や[[ロブスター]]など)が使われる例もある<ref name="NBB298"/>。{{Val|1|u=L}}の血液が溶かせる酸素ガスは{{Val|200|u=mL}}である<ref name="NBB298">[[#Reference-idEmsley2001|Emsley (2001)]], p. 298.</ref>。 [[超酸化物イオン]]や[[過酸化水素]]などの[[活性酸素]]は、酸素呼吸を行う生体にとって非常に危険な副産物であり<ref name="sakurai68" /><ref name="NBB298"/>、[[ミトコンドリア]]を取り込んだ[[真核生物]]は、進化の過程で[[デオキシリボ核酸]]を酸素から保護するために[[核膜]]を獲得した<ref name="mito31-35" />。その一方で、高等生物は[[免疫系]]で[[細菌]]を破壊するために[[過酸化物]]を用いている<ref name="sakurai68" /><ref name="mito71-74">[[#瀬名ら|瀬名らp.71-74 2.危険なエネルギープラント ミトコンドリアの姿と働き 酸素と活性酸素]]</ref>。また、植物が病原体に抵抗して起こす[[過敏感反応]]([[:en:hypersensitive response|hypersensitive response]])でも、活性酸素は重要な役割を果たす<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.agr.niigata-u.ac.jp/study_report/report/60-02/91_95.pdf|format=PDF|title=植物病原菌の防御反応の誘導機構|publisher=[[新潟大学]]農学部|author=古市尚高|accessdate=2010-05-14}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=http://lifesciencedb.jp/dbsearch/Literature/get_pne_cgpdf.php?year=2005&number=5004&file=glxJMfrEsiMHymYJQTzRoQ== |format=PDF|title=植物における活性酸素の役割とその誘導|publisher=[[文部科学省]]委託研究開発事業|author=吉岡博文・山溝千尋|accessdate=2010-05-14}}</ref>。 成人が消費する酸素は、1分あたり約{{Val|250|u=mL}}であり<ref>{{Cite web|和書|title=東邦大学医学部 「呼吸器系」ユニット講義録8|url=http://www.lab.toho-u.ac.jp/med/physi1/respi/respi8/respi8.html|accessdate=2012-07-01}}</ref>、これは約{{Val|0.36|u=g}}に相当する。ここから計算すると、人類全体が1年間に消費する量は13億トンに相当する<ref group="注">(0.36 g/分/人) × (60秒/時) × (24時/日) × (365日/年) × (70億人)/{{gaps|1|000|000}} = 13.2億トン</ref>。 なお、酸素を利用しない呼吸の形態を[[嫌気呼吸]]という。最初の地球に酸素が存在しなかったことから、これが最初の呼吸のあり方と考えられる。これは好気呼吸の経路にも、[[解糖系]]という形態で残っている。酸素を全く使わずに生活する微生物も存在し、そのような微生物は、酸素の存在下では死滅する([[嫌気性生物]])。初期の微生物にとっても、酸素は有毒物質であった。 == 歴史 == 地球では、約22.22億年前の地球全体が凍りつく[[全球凍結]]の直後に、光合成を行うシアノバクテリアが増加し、酸素濃度が急激に上昇する{{ill2|大酸化イベント|en|Great Oxidation Event}}が発生した<ref>{{Cite web |url=https://park.itc.u-tokyo.ac.jp/tajika/research/Atmospheric-concentration-of-Oxygen/ja.html |title=田近研究室 » 大気中酸素濃度の上昇史とそのメカニズムの解明 |access-date=2025-05-23 |website=park.itc.u-tokyo.ac.jp}}</ref><ref>{{Cite web |url=https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC056N90V01C21A0000000/ |title=20数億年前に酸素急増の謎、1日が長くなったから? |access-date=2025-05-23 |date=2021-10-25 |website=日本経済新聞 |language=ja}}</ref>。 === 初期の実験 === [[ファイル:Philos experiment of the burning candle.PNG|thumb|120px|right|フィロンの実験は後の研究者たちに影響を与えた]] [[燃焼]]と空気の間には何らかの関係があるのでは、と行われたもっとも古い実験のひとつは、紀元前2世紀の[[古代ギリシア]]の[[ビザンチウムのフィロン]]が著した『プネウマティカ(Pneumatica)』に記録されている。器に据えた[[蝋燭]]を灯してガラスの壺を上から被せ、壺の口が漬かるまで器に水を満たす。すると、壺の中へ水が吸い上がる様子を観察することができた<ref>{{cite book|title = Story of Human Error|first = Joseph |last = Jastrow|url=https://books.google.co.jp/books?id=tRUO45YfCHwC&pg=PA171&lpg=PA171&redir_esc=y&hl=ja|page= 171 |year = 1936|publisher = Ayer Publishing|isbn = 0836905687}}</ref>。フィロンは、壺の中の空気が「[[四大元素]]の火」に変換され、これが壺のガラス壁を透過して逃げたと考えた。それから遥か時代が下った中世の[[ルネサンス]]期に、[[レオナルド・ダ・ヴィンチ]]はフィロンの実験に考察を加え、燃焼や[[呼吸]]を通じて空気が一部消費されると考えた<ref name="ECE499">[[#Cook|Cook & Lauer (1968)]], p. 499.</ref>。 17世紀後半に[[ロバート・ボイル]]は、燃焼には空気が必要不可欠であることを立証した。これを[[ジョン・メーヨー]]は、必要なものは彼が「硝気精<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.tamabi.ac.jp/idd/shiro/air/discovery/discovery.html|title=空気の発見|author=高橋士郎|publisher=[[多摩美術大学]]|accessdate=2010-05-28|archiveurl=https://web.archive.org/web/20130615095739/http://www.tamabi.ac.jp/idd/shiro/air/discovery/discovery.html|archivedate=2013-06-15}}</ref>(spiritus nitroaereus、nitroaereus)」と名づけた空気の構成要素だという説を提唱した<ref name="EB1911">{{cite book|title=Encyclopaedia Britannica|chapter=John Mayow|edition=11th|year=1911|url=http://www.1911encyclopedia.org/John_Mayow|accessdate=2007-12-16|author=''Britannica'' contributors}}</ref>。メイヨーの実験はフィロンと同じように水で封じた逆さの容器にそれぞれ蝋燭とマウスを入れ、どちらも水位が14分の1程度上昇したことを確認した<ref name="WoC">{{cite book|title=World of Chemistry|chapter=John Mayow|year=2005|publisher=Thomson Gale|url=http://www.bookrags.com/John_Mayow|accessdate=2007-12-16|author=''World of Chemistry'' contributors}}</ref>。これから、メイヨーは燃焼と呼吸のいずれでも硝気精が消費されるとの確証を得た。またメイヨーは、[[アンチモン]]を加熱すると質量が増えることも確認し、これは金属に硝気精が結合したためと考えた<ref name="EB1911"/>。呼吸については、硝気精は[[肺]]の中で空気から取り出されて血液に受け渡され、動物の体温や筋肉の動きを生み出す反応に使われると考察し<ref name="EB1911"/>、1668年に発表した<ref name="WoC"/>。 === フロギストン説 === [[ファイル:Georg Ernst Stahl.png|thumb|160px|right|[[ゲオルク・シュタール]]はフロギストン説の構築と普及に寄与した]] {{Main|フロギストン説}} 17世紀から18世紀にかけて、酸素は[[ロバート・フック]]、{{仮リンク|オーレ・ボッシュ|en|Ole Borch}}、[[ミハイル・ロモノーソフ]]、ピエール・バイエンらが実験で作り出していたが、いずれもがそれを元素とは認識しなかった<ref name="NBB299">[[#Reference-idEmsley2001|Emsley (2001)]], p. 299.</ref>。そこには、[[フロギストン説]]と呼ばれる燃焼と腐食に関する広く知られた学説が影響を及ぼしていた。 1667年に[[ドイツ]]の[[錬金術]]師[[ヨハン・ベッヒャー]]が発案し、1731年までに[[ゲオルク・シュタール]]が理論構築したフロギストン説<ref name="morris">{{cite book| title = The last sorcerers: The path from alchemy to the periodic table| last = Morris| first = Richard| year = 2003|publisher = Joseph Henry Press|location = Washington, D.C.|isbn = 0309089050}}</ref>は、可燃物とは燃素(フロギストン)とほかの物質の2つが結合した状態にあり、燃焼が起こると燃素が遊離し、残りの物質もしくは[[石灰]]が残るというものだった<ref name="ECE499"/>。この説では、木材や石炭などは燃素の含有率が高く、鉄など不燃性のものはほとんど含まないと考えられた。空気の効果は無視され、わずかに行われた実証試験でも可燃物を燃やすと軽くなるという点から確かに何かが失われているという考察がされたに過ぎず<ref name="ECE499"/>、発生ガスへ意識が向けられることはなかった。このフロギストン説が否定される契機は、金属を空気中で燃やすと重量が増すという報告だった。 === 発見 === [[ファイル:Carl Wilhelm Scheele from Familj-Journalen1874.png|thumb|160px|left|[[カール・ヴィルヘルム・シェーレ]]。惜しくも酸素発見者の栄誉を逃した]] 酸素は[[1771年]]<ref name="Newton96" />、[[スウェーデン]]の[[カール・ヴィルヘルム・シェーレ]]が[[酸化水銀(II)]]とさまざまな[[硝酸塩]]混合物を加熱する過程で発見した<ref name="ECE500"/><ref name="ECE499"/>。シェーレはこの気体を「火素(fire air)」と名づけ1775年に論文を作成したが、出版社の都合で<ref name="Newton96" />発表されたのは1777年となった<ref name="NBB300">[[#Reference-idEmsley2001|Emsley (2001)]], p. 300.</ref>。 [[ファイル:PriestleyFuseli.jpg|thumb|160px|right|[[ジョゼフ・プリーストリー]]。一般的には彼が酸素の発見者とされる]] シェーレが発見を知らしめるのに手間取っていた[[1774年]][[8月1日]]、[[イギリス]]の[[ジョゼフ・プリーストリー]]はガラス管に入れた酸化水銀(II)に[[太陽光|日光]]を照射して得たガスに「脱フロギストン空気(dephlogisticated air)」と命名した<ref name="ECE500"/>。彼はこのガスの中では蝋燭がより明るく燃え、マウスが活発かつ長寿になることを確かめた。さらに自分でこのガスを吸い、「吸い込んだときには普通の空気と大差ないと思ったが、少し後になると呼吸が軽く楽になった」と書き残した<ref name="NBB299"/>。1775年、プリーストリーは新聞紙上にこの発見を発表し、2冊目の著作 ''[[:en:Experiments and Observations on Different Kinds of Air|Experiments and Observations on Different Kinds of Air]]''でも論述した<ref name="ECE499"/>。このように、彼の発表がシェーレよりも先に行われたため、酸素発見者はプリーストリーということになった。 [[フランス]]の高名な化学者[[アントワーヌ・ラヴォアジエ]]は、のちに自分が新元素を発見していたと主張したが、1774年10月にラヴォアジエはプリーストリーの訪問を受け、ガス発生手段など実験の概要を耳にしている。また、それに先立つ9月30日、プリーストリーは前もって新発見したガスの説明を記した書簡をラヴォアジエに送っているが、ラヴォアジエはこれを受け取っていないと主張した。なおプリーストリーの死後、彼の私物の中から書簡の写しが見つかっている<ref name="NBB300"/>。 === ラヴォアジエの功績 === [[ファイル:Lavoisier, Antoine Laurent de (1743-1794) CIPB1171.jpg|thumb|160px|left|[[アントワーヌ・ラヴォアジエ]]。旧来の[[フロギストン説]]を葬り去った]] ラヴォアジエは、厳密な物質量確認を伴う[[酸化]]の実験を通じて、燃焼の実態を正しく説明することに貢献した<ref name="ECE500"/>。彼は[[フロギストン説]]を否定し、プリーストリーらが発見したガスが元素のひとつであると立証するため、1774年以来行われた実験の追試に乗り出した。 ラヴォアジエは、[[スズ]]と空気を密閉した容器を加熱しても全体の重さに変化がないことを観測し<ref name="ECE500"/>、開封すると外気が流れ込むことから空気の一部が減少していると確認し、またスズが重くなっていることも計測した。そして、この流入空気質量とスズの質量増分が同じであることを確認した。1777年、彼はこの実験結果などをまとめた書籍『''Sur la combustion en général''』を発表した<ref name="ECE500"/>。この中でラヴォアジエは、空気は燃焼と呼吸に深く関わる''vital air''と、これらに関与しない''azote''({{lang-grc-short|ζωτον}}、「生気のない」の意)」の2種類のガスが混合したものと証明した。''azote''はのちに[[窒素]]とされた<ref name="ECE500"/>。 1777年、ラヴォアジエは『酸素こそすべての[[酸化剤]]({{lang-en|oxidizing agent}})の源泉である』と考え、古代ギリシア語{{Polytonic|ὀξύς}}(oxys、「鋭い」の意)と {{Polytonic|-γενής}}(-genēs、「製作者」の意)を合成したフランス語「oxygène」という命名を「vital air」に施した{{sfn|万有百科大事典|1974|p=642}}。 1791年に[[詩人]]でもある[[エラズマス・ダーウィン]]([[チャールズ・ダーウィン]]の祖父)が出版した有名な書籍『植物の園』(''The Botanic Garden'')の中で、このガスを称賛する詩『''oxygen''』を載せたため、すでに一般に広まっていたこともあり、「oxygen」の単語は英語に組み込まれていった<ref name="NBB300"/>。 === 量産・工業化 === [[ジョン・ドルトン]]の[[原子論]]では、当初すべての元素は「単元素」であり、原子比も単純なものであるという仮定があり、水は水素と酸素が1対1のHOというみなしの元で酸素の原子量を8と判断していた<ref>{{cite web| title = The Interactive Textbook of PFP96 |chapter= Do We Take Atoms for Granted?|chapterurl=http://www.physics.upenn.edu/courses/gladney/mathphys/subsubsection1_1_3_2.html |url=http://www.physics.upenn.edu/courses/gladney/mathphys/Contents.html |first=Dennis |last=DeTurck |coauthors=Gladney, Larry and Pietrovito, Anthony| publisher=University of Pennsylvania|year=1997|accessdate=2008-01-28}}</ref>。これは1805年に[[ジョセフ・ルイ・ゲイ=リュサック]]と[[アレクサンダー・フォン・フンボルト]]によって原子比が1対2に改められ、1811年に[[アメデオ・アヴォガドロ]]がアボガドロの法則に則って水の正しい構成を解釈した<ref>{{cite book|title=A Treatise on Chemistry|first=Henry Enfield |last=Roscoe |coauthors=Schorlemmer, Carl|pages=38|year=1883|publisher=D. Appleton and Co.}}</ref>。 19世紀には空気の構成も判明してきた。1877年に[[スイス]]の{{仮リンク|ラウル・ピクテ|en|Raoul Pictet}}<ref name="BES707">{{cite book|title=Biographical Encyclopedia of Scientists|last=Daintith|first=John|year=1994|publisher=CRC Press|isbn=0750302879|page=707}}</ref>とフランスの[[ルイ・ポール・カイユテ]]<ref name="BES707"/>が相次いで酸素の液体化に成功したと発表し、安定状態での液体酸素は[[ヤギェウォ大学]]の[[ジグムント・ヴルブレフスキ]]と{{仮リンク|カロル・オルシェフスキ|en|Karol Olszewski}}が初めて得た<ref>[http://www.poland.gov.pl/Karol,Olszewski,and,Zygmunt,Wroblewski:,condensation,of,oxygen,and,nitrogen,1987.html Poland - Culture, Science and Media. Condensation of oxygen and nitrogen]. Retrieved on 2008-10-04.</ref>。 1891年にはイギリスの[[ジェイムズ・デュワー]]が研究で用いるに充分な液体酸素の製法を見つけ<ref name="NBB303">[[#Reference-idEmsley2001|Emsley (2001)]], p. 303.</ref>、1895年には[[ドイツ]]の[[カール・フォン・リンデ]]とイギリスのウィリアム・ハンプソンがそれぞれ液化分留による商業ベースに乗る量産法を確立した<ref name="HPAM">{{cite book|title=How Products are Made|chapter=Oxygen|publisher=The Gale Group, Inc|year=2002|url=http://www.answers.com/topic/oxygen|accessdate=2007-12-16|author=''How Products are Made'' contributors}}</ref>。この酸素を工業的に用いる例として、1901年には[[アセチレン]]と圧縮酸素を用いた[[溶接]]法のデモンスチレーションが行われた<ref name="HPAM"/>。 == 製造 == 実験室的には[[過酸化水素]]を触媒で分解することで得られる<ref name="sakurai65" />。触媒としては[[二酸化マンガン]]または、[[カタラーゼ]]およびそれらを含む[[レバー (食材)|レバー]]や[[ジャガイモ]]などが利用できる。 : <chem>2H2O2 -> 2H2O + O2</chem> そのほか、[[水]]の{{仮リンク|水の電気分解|en|Electrolysis of water|label=電気分解}}でも得られる。純粋な水は[[電気]]を通さないため少量の[[水酸化ナトリウム]]を加える。酸素は[[陽極]]で発生し、[[陰極]]では[[水素]]が発生する。 : <chem>2H2O -> 2H2 + O2</chem> [[file:Oxygen cylinders for MRI room.jpg|200px|thumb|日本の規格に基づき黒色に塗られた酸素ボンベ([[核磁気共鳴画像法|MRI]]用)]] 工業的には空気の[[分留]]で得られる。空気を圧縮冷却し、沸点の差を利用して窒素やアルゴンなどほかの成分と分けられる<ref name="kagaku" />。酸素が圧縮充填されるボンベの規格は各国さまざまであり、容器の色は[[国際標準化機構|ISO]]では白、アメリカ合衆国では緑、日本では黒(特に高純度品は表面積の半分を超えない範囲で水色も加えられる)と定められる。日本では内部圧力が{{Val|14.7|ul=MPa}}と定められている<ref name="kagaku" />。液体充填されている容器は断熱構造をしており、圧力は{{Val|1|u=MPa}}以下(およそ{{Val|700|u= kPa}})程度、色は地金(ステンレスやアルミ合金の場合)か灰色に黒の帯を配したものである。ただし工業的にはほとんど液体酸素を[[タンクローリー]]で1回あたり9–10トンが輸送され、低温液化ガス貯槽([[コールドエバポレーター]])で受け入れされる<ref name="kagaku" />。 == 用途 == ; 酸化剤 : [[化学工業]]などではもっとも安価な[[酸化剤]]として多用される。 ; 吸入用 : 呼吸に不可欠な元素であるため、[[医療]]分野での酸素吸入に使われている<ref name="taiyonissan">{{Cite web|和書|url=http://www.tn-sanso.co.jp/jp/business/gas_o2.html|title=大陽日酸:事業紹介:酸素O2|publisher=[[大陽日酸]]|accessdate=2010-07-11}}</ref>。また傷病人に限らず、空気中の酸素濃度が低い場所での呼吸を助けるために、[[飛行機]]や[[青海チベット鉄道]]などの酸素放出装置や、高山に登るときなどのボンベの中身にも使われている。ほかに[[テクニカルダイビング]]において、減圧用ガスとして用いられる。 ; 助燃剤 : ガス[[溶接]]や[[鉄鋼]]の製造工程で助燃剤として使用されている<ref name="taiyonissan"/>。[[アセチレン]]を酸素とともに吹き出して得られる酸素アセチレン炎は{{val|3000|-|4000|u=degC}}もの高温が得られ、鉄材の溶接や切断に利用されている。特に[[液体酸素]]は[[ロケットエンジンの推進剤]]の酸化剤として用いられている。 酸素ガスの2004年度日本国内生産量は{{Val|10422238000|ul=m3}}、工業消費量は{{val|4093787000|u=m3}}、液化酸素の2004年度日本国内生産量は{{val|855476000|u=m3}}、工業消費量は{{val|68215000|u=m3}}である<ref>[http://www.meti.go.jp/statistics/data/h2d4k00j.html 日本国 経済産業省・化学工業統計月報]</ref>。 == 化合物 == {{See also|Category:酸素の化合物}} 酸素は[[電気陰性度]]が高く、ほとんどあらゆる元素と[[化学結合]]する。多くの[[有機化合物]]は構成元素として酸素を含み、[[無機化合物]]の酸素化合物は[[酸化物]]として多方面で利用されている。 == 同素体 == [[ファイル:Ozone-montage.png|thumb|upright|[[オゾン]]はおもに[[大気]]中に含まれる希有な気体である]]{{See also|酸素の同素体}} 地球上でのおもな同素体は酸素分子O{{sub|2}}であり、その[[結合長]]は{{Val|121|ul=pm}}、[[結合エネルギー]]は{{Val|498|ul=kJ/mol}}である<ref>{{cite web|last=Chieh|first=Chung|title=Bond Lengths and Energies|url=http://www.science.uwaterloo.ca/~cchieh/cact/c120/bondel.html|publisher= University of Waterloo|accessdate=2007-12-16}}</ref>。酸素分子は生物の複雑な[[細胞呼吸]]に使われている。 [[熱圏]]、[[電離層|電離圏]]での超高層大気では一部の酸素はX線、紫外線により分解され[[原子状酸素]]の状態で存在している。<ref>{{Cite web|title=原子状酸素 [JSME Mechanical Engineering Dictionary]|url=https://www.jsme.or.jp/jsme-medwiki/doku.php?id=05:1003697|website=www.jsme.or.jp|access-date=2026-07-03|language=ja}}</ref> '''三酸素'''(O{{sub|3}})は[[オゾン]]としてよく知られる非常に反応性の大きい[[単体]]の気体で、吸入すると肺組織を破壊する<ref name="sakurai66">[[#桜井|桜井 (1997)]]、66頁。</ref><ref name="GuideElem48" />。オゾンは高層大気において、酸素分子が[[紫外線]]によって分裂した酸素原子と別の酸素分子が結合することによって生成している<ref name="mellor" />。オゾンは紫外領域を強く吸収するため、高層大気にある[[オゾン層]]は地球を[[放射線]]から保護するシールドとして機能している<ref name="GuideElem48" /><ref name="sakurai67">[[#桜井|桜井 (1997)]]、67頁。</ref>。地表近くでもオゾンは生成しているが、これは自動車の排気ガスなどとして生成されている[[大気汚染]]物質である<ref name="GuideElem49">Stwertka, Albert (1998). Guide to the Elements (Revised ed.). Oxford University Press, p.49. ISBN 0-19-508083-1.</ref>。 [[準安定状態]]分子である[[四酸素]]({{Chem2|O4}})が[[2001年]]に発見されたが<ref name="o4">Cacace, Fulvio; Giulia de Petris, and Anna Troiani (2001). "Experimental Detection of Tetraoxygen". ''[[アンゲヴァンテ・ケミー|Angewandte Chemie International Edition]]'' '''40''' (21): 4062-65. [[デジタルオブジェクト識別子|doi]]:[https://doi.org/10.1002%2F1521-3773%2820011105%2940%3A21%3C4062%3A%3AAID-ANIE4062%3E3.0.CO%3B2-X 10.1002/1521-3773(20011105)40:21<4062::AID-ANIE4062>3.0.CO;2-X.]</ref><ref name="newform">Ball, Phillip (2001-09-16). "[http://www.nature.com/news/2001/011122/pf/011122-3_pf.html New form of oxygen found]". Nature News. Retrieved 2008-01-09.</ref>、これは[[固体酸素]]の6種の相のうちの1種として存在が仮定されていた。2006年にこの相が証明され、O{{sub|2}}を{{Val|20|ul=GPa}}に加圧することで合成されたが、実際には[[菱面体晶]]の{{Chem2|O8}}クラスターであった<ref>Lundegaard, Lars F.; Weck, Gunnar; McMahon, Malcolm I.; Desgreniers, Serge and Loubeyre, Paul (2006). "[https://www.nature.com/articles/nature05174 Observation of an O8 molecular lattice in the phase of solid oxygen]". ''Nature'' '''443''': 201-04. [[デジタルオブジェクト識別子|doi]]:[https://doi.org/10.1038%2Fnature05174 10.1038/nature05174]. Retrieved 2008-01-10., 201-04</ref>。このクラスターは{{Chem2|O2}}や{{Chem2|O3}}よりも強力な[[酸化剤]]であるため、ロケットの推進剤としての用途が考えられている<ref name="o4"/><ref name="newform"/>。1990年には、固体酸素に{{Val|96|u=GPa}}以上の圧力を与えると金属状態となることが分かり<ref>Desgreniers, S; Vohra, Y. K. & Ruoff, A. L. (1990). "Optical response of very high density solid oxygen to 132 GPa". ''J. Phys. Chem.'' '''94''': 1117-22. [[デジタルオブジェクト識別子|doi]]:[https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/j100366a020 10.1021/j100366a020.]</ref>、1998年にはこの相を超低温条件に置くことにより超伝導となることが発見された<ref>Shimizu, K.; Suhara, K., Ikumo, M., Eremets, M. I. & Amaya, K. (1998). "Superconductivity in oxygen". ''Nature'' '''393''': 767-69. [[デジタルオブジェクト識別子|doi]]:[https://doi.org/10.1038%2F31656 10.1038/31656.]</ref>。 == 同位体 == {{Main|酸素の同位体}} 酸素には[[安定同位体]]として{{Chem|link=酸素16|16|O}}、{{Chem|link=酸素17|17|O}}、{{Chem|link=酸素18|18|O}}の3種類が知られるが、[[天然存在比]]は{{Chem|16|O}}が{{Val|99.7|u=%}}以上を占めている。また、[[放射性同位体]]も作られている。 かつては酸素を16として[[原子量]]を定義していたが、物理学では{{Chem|16|O}}の原子量を16としたのに対して、化学においては安定核種の平均原子量を16と置く定義の差があったことから、酸素の同位体の存在が判明して以降混乱が起こり、1961年に[[炭素12]]を基準とするように置き換えられた。{{-}} == 安全と注意 == [[ファイル:Scuba-diving.jpg|thumb|酸素中毒は通常よりも高い気圧の酸素を肺が吸い込んだ時に起こりやすい。深度への[[スクーバダイビング]](ディープダイビング)などで起こる可能性がある]] === 酸素中毒 === {{Main|酸素中毒}} 酸素ガスは高い[[分圧]]状態で痙攣症状などの[[酸素中毒]]を引き起こす場合がある<ref name="Acott">{{cite journal |last=Acott |first=C. |title=Oxygen toxicity: A brief history of oxygen in diving |journal=South Pacific Underwater Medicine Society journal |volume=29 |issue=3 |year=1999 |issn=0813-1988 |oclc=16986801 |url=http://archive.rubicon-foundation.org/6014 |accessdate=2008-09-21}}</ref><ref name="ECE511">[[#Cook|Cook & Lauer (1968)]], p. 511.</ref>。これは通常、大気の2.5倍の[[酸素分圧]]に相当する{{Val|50|ul= kPa}}以上であるときに起こる。そこで、標準気圧{{Val|30|u= kPa}}の医療用酸素マスクは、酸素ガス比率を{{Val|30|u=%}}に定めている<ref name="NBB299"/>。かつて[[未熟児]]用保育器の中は高い比率の酸素を含んだガスが使われていたが、視神経に悪影響を与える可能性が指摘されてからは用いられなくなった<ref name="NBB299"/><ref name="pmid9603802">{{cite journal |author=Drack AV |title=Preventing blindness in premature infants |journal=N. Engl. J. Med. |volume=338 |issue=22 |pages=1620-1 |year=1998 |pmid=9603802 |doi= 10.1056/NEJM199805283382210}}</ref>。 宇宙飛行などにおいて、[[アポロ計画]]では火災事故以前の初期段階で<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.jbo-info.jp/news/jbo-2005-01.html|title=2005年 代表選抜試験で出題された問題とその解説|author= |publisher=国際生物学オリンピック日本委員会|accessdate=2010-05-28}}</ref>、また最新の[[宇宙服]]などにて比較的低圧で封じるため純酸素ガスが使用された<ref name="pmid11541018">{{cite journal |author=Morgenthaler, G. W.; Fester, D. A.; Cooley, C. G. |title=As assessment of habitat pressure, oxygen fraction, and EVA suit design for space operations |journal=Acta Astronaut |volume=32 |issue=1 |pages=39-49 |year=1994|pmid=11541018 |doi= 10.1016/0094-5765(94)90146-5}}</ref><ref>{{cite web|last = Wade|first = Mark|year = 2007|url = http://www.astronautix.com/craftfam/spasuits.htm|title = Space Suits|publisher = Encyclopedia Astronautica |accessdate=2007-12-16}}</ref>。最新の宇宙服では、服内を0.3気圧程度まで減圧した純酸素で満たし、血液中の酸素分圧が上昇しない方法が取られている<ref>{{Cite web|和書|url=http://airex.tksc.jaxa.jp/pl/dr/AA0028876004/en|title=船外活動技術における生命維持技術の検討|author=鳥居啓之(川崎重工業)|publisher=[[宇宙航空研究開発機構]]|accessdate=2010-05-28}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://iss.jaxa.jp/iss/kibo/develop_status_01_2.html|title=宇宙服と船外活動|author= |publisher=宇宙航空研究開発機構|accessdate=2010-05-28}}</ref>。 肺や[[中枢神経系]]に及ぼす酸素中毒は、深い水深への[[スクーバダイビング]](ディープダイビング)や[[送気式潜水]]でも起こる可能性がある<ref name="NBB299"/><ref name="Acott"/>。酸素分圧{{Val|60|u= kPa}}以上の空気を長い時間呼吸した場合、恒久的な[[肺線維症]]に至ることがある<ref name="BMJ">{{cite journal |author=Wilmshurst, P. |title=Diving and oxygen |journal=BMJ |volume=317 |issue=7164 |pages=996-999 |year=1998 |pmid=9765173 |pmc=1114047}}</ref>。これがさらに高い{{Val|160|u= kPa}}以上となると、痙攣を起こし死にいたる場合もある。酸素比率{{Val|21|u=%}}の空気を用いて{{Val|66|u=m}}以上潜水すると深刻な酸素中毒を起こすが、同様のことは純酸素ならばわずか{{Val|6|u=m}}の潜水で起こる<ref name="BMJ"/><ref name="Donald">{{cite book|author=Donald, Kenneth W.|title=Oxygen and the Diver|isbn=1854211765|year=1992|publisher=SPA in conjunction with K. Donald|location=England}}</ref><ref name="Donald1">{{cite journal|author=Donald, Kenneth W.|title=Oxygen Poisoning in Man: Part I|journal=British Medical Journal|volume=1 |issue=4506 |pages=667-672 |year=1947 |pmc=2053251 |doi=10.1136/bmj.1.4506.667}}</ref><ref name="Donald2">{{cite journal |author=Donald, K. W. |title=Oxygen Poisoning in Man: Part II |journal=British Medical Journal |volume=1 |pages=712-717 |year=1947 |pmc=2053400|issue=4507 |doi=10.1136/bmj.1.4507.712}}</ref>。 [[ファイル:Apollo 1 fire.jpg|thumb|right|[[アポロ1号]]実験中に発生した火災現場の写真。当時は[[純酸素]]が使われていた]] === 過剰酸素中の激しい燃焼・爆発 === 高濃度酸素と[[可燃物]]が混在している状況で、そこに何らかの火種があれば[[火災]]や[[爆発]]で激しい燃焼が引き起こされる<ref name="astm-tpt">{{cite conference|editor=Werley, Barry L.|year=1991|title=Fire Hazards in Oxygen Systems|book-title=ASTM Technical Professional training|publisher=[[ASTMインターナショナル|ASTM International]] Subcommittee G-4.05|location=Philadelphia}}</ref>。酸素は空気より重いため、地下室のような場所に滞留しやすい、また、無色で無臭かつ無害であるため、酸素が充満していることに気付くことは難しい。高濃度酸素の環境下では、酸素の支燃性により、金属等の、通常は容易には燃えないような物から火が出る危険性がある他、可燃物はさらに燃えやすくなる<ref name=":0">{{Cite journal|和書|publisher=安全工学会 |title=過剰酸素中の火災・爆発 |url=https://doi.org/10.18943/safety.37.2_122 |author=駒宮功額 |journal=安全工学 |volume=37 |issue=2 |pages=122-127 |year=1998 |doi=10.18943/safety.37.2_122}}</ref>。 過去の事例としては、酸素が充満したタンクの内部で[[グラインダー]]を使用中に、飛び散った火花が[[作業服]]に引火して燃え上がり、作業員が[[焼死]]した事故がある<ref name=":0" />。[[高気圧酸素治療]]を行う際には、発火物の持ち込みが禁止されるほか、[[静電気]]による火花を防ぐため、[[木綿]]100%の[[下着]]を着用する必要がある。 燃焼発生の危険は、酸素が酸化電位の高い物質、たとえば[[過酸化物]]や[[塩素酸塩]]、[[硝酸塩]]や[[過塩素酸塩]]、[[クロム酸塩]]などと混在している場合も高い。 == 大気中酸素濃度の減少 == 現在、地球の[[大気]]中における酸素濃度は約{{Val|20.9490|u=%}}であるが、年平均{{Val|4|ul=ppm}}ずつ減少している(1999年から2005年の平均値)という調査結果がある<ref>[https://www.nies.go.jp/whatsnew/2008/20080123/20080123.html 大気中酸素濃度の減少量から二酸化炭素の陸域生物圏吸収量の推定に成功]([[国立環境研究所]])</ref>。一方で、大気中の[[二酸化炭素]]濃度は年平均{{Val|2|u=ppm}}ずつ増加しており、酸素濃度の減少もこれに関連して[[化石燃料]]の燃焼などがおもな原因になっていると思われる。また、二酸化炭素濃度の増加量と酸素濃度の減少量の差は、二酸化炭素が[[海面]]で多く吸収されている(陸上の約2倍)ことや、化石燃料燃焼時に二酸化炭素排出量より酸素消費量の方が1.4倍多いことなどに起因する。大気中酸素濃度の1年間を通した変動では、陸上における[[光合成]]量が[[呼吸]]量を上回る[[北半球]]の[[夏季]]には増加しており、[[冬季]]には減少している。 もっとも、大気中の二酸化炭素濃度は2016年で約{{Val|0.041|u=%}}({{Val|407|u=ppm}})ほどであり、約21 %の酸素とは、元々の大気中濃度が全く異なっている。年平均{{Val|4|u=ppm}}の酸素減少は、1万年間で4 %程度の濃度減少である。 == 脚注 == {{脚注ヘルプ}} === 注釈 === {{Notelist2}} === 出典 === {{Reflist|25em|refs= <ref name="mellor">{{cite book|last=Parks|first=G. D.|coauthors=Mellor, J. W.|year=1939|title=Mellor's Modern Inorganic Chemistry|edition=6th |publisher=Longmans, Green and Co|location=London}}</ref> }} == 参考文献 == * {{Cite book|和書|date=1998年|title=元素111の新知識|edition=第6刷|publisher=[[講談社]]|author=桜井弘 |isbn=4-06-257192-7|ref=桜井}} * {{Cite book|和書 |author= 植村琢 |authorlink= 植村琢 |coauthors= 崎川範行、[[桜田一郎]]、[[水島三一郎]] |editor=相賀徹夫|editor-link=相賀徹夫|others= |title= 万有百科大事典 15 化学 |origdate= 1974-10-20 |url= |format= |accessdate= |edition= 初版 |date= |year= |publisher= [[小学館]] |location= |series= [[日本大百科全書]] |language= 日本語 |ref={{SfnRef|万有百科大事典|1974}}}} * {{Cite book|和書|date=2005年|title=リー 無機化学|author=J・D・リー|others=浜口博、菅野等(訳)|edition=第1版第22刷|publisher=[[東京化学同人]]|isbn=4-8079-0185-0|ref=リー}} * {{Cite book|和書|author=瀬名秀明、太田成男|date=2000年|title=ミトコンドリアと生きる|publisher=[[角川書店]]|edition=第一刷|isbn=4-04-704006-1|ref=瀬名ら}} * {{cite book|和書|last=酒井|first=治孝|title=地球学入門 ― 惑星地球と大気・海洋のシステム|publisher=[[東海大学出版会]]|edition=第1版第1刷|date=2003-03-31|isbn=4-486-01615-7|ref=harv|year=2003}} * {{Cite book|和書|author1=玉尾皓平|authorlink1=玉尾皓平|author2=桜井弘|author3=福山秀敏(監修)|year=2010|title=完全図解周期表|series=[[ニュートン (雑誌)|ニュートン]]別冊|edition=第2版|publisher=[[ニュートンプレス]]|isbn=978-4-315-51876-4|ref=ニュートン}} * {{cite book|author=Cook, Gerhard A.; Lauer, Carol M.|year=1968|chapter=Oxygen|editor=Hampel, Clifford A|title=The Encyclopedia of the Chemical Elements|location=New York|publisher=Reinhold Book Corporation|pages=499-512|LCCN=68-29938|ref=Cook}}. * {{cite book|ref=Reference-idEmsley2001 |title=Nature's Building Blocks: An A-Z Guide to the Elements|last=Emsley|first=John|publisher=Oxford University Press|year=2001|location=Oxford, England, UK|isbn=0198503407|chapter=Oxygen|pages=297-304}} * {{cite book|ref=Reference-idRaven2005 |last=Raven|first=Peter H.|coauthors=Ray F. Evert, Susan E. Eichhorn|title=Biology of Plants, 7th Edition|publisher=W.H. Freeman and Company|year=2005|location = New York|pages=115-127|isbn = 0-7167-1007-2}} == 関連項目 == {{Wiktionary|酸素}} {{Commons|Oxygen}} * [[酸素欠乏症]] * [[酸素濃縮器]] * [[酸素濃度計]] * [[酸素バー]] * [[酸素魚雷]] * [[塩素酸ナトリウム]] - 宇宙や飛行機内などの酸素不足環境下での酸素供給源。 == 外部リンク == * {{ICSC|0138}} * {{Kotobank}} {{元素周期表}} {{酸素の同素体}} {{酸素の化合物}} {{二原子分子}} {{Normdaten}} {{DEFAULTSORT:さんそ}} [[Category:酸素|*]] [[Category:元素]] [[Category:非金属元素]] [[Category:カルコゲン]] [[Category:第16族元素]] [[Category:第2周期元素]] [[Category:酸化剤]] [[Category:E番号添加物]] [[Category:特定高圧ガス]] {{Good article}} 編集内容の要約: 宇宙wikiへの投稿はすべて、クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 (詳細は宇宙wiki:著作権を参照)のもとで公開したと見なされることにご注意ください。 自分が書いたものが他の人に容赦なく編集され、自由に配布されるのを望まない場合は、ここに投稿しないでください。 また、投稿するのは、自分で書いたものか、パブリック ドメインまたはそれに類するフリーな資料からの複製であることを約束してください。 著作権保護されている作品は、許諾なしに投稿しないでください! キャンセル 編集ヘルプ (新しいウィンドウで開きます) このページで使用されているテンプレート: テンプレート:- (編集) テンプレート:Accessdate (編集) テンプレート:Accessdate/core (編集) テンプレート:Chem (編集) テンプレート:Chem2 (編集) テンプレート:Citation/showdate (編集) テンプレート:Citation/showdateCore (編集) テンプレート:Cite book (編集) テンプレート:Cite conference (編集) テンプレート:Cite journal (編集) テンプレート:Cite web (編集) テンプレート:Column-count (編集) テンプレート:Column-width (編集) テンプレート:Commons (編集) テンプレート:Convert (編集) テンプレート:Efn2 (編集) テンプレート:Elementbox (編集) テンプレート:Gaps (編集) テンプレート:Good article (編集) テンプレート:ICSC (編集) テンプレート:ISO639言語名 (編集) テンプレート:ISO date/ymd (編集) テンプレート:ISO dateJA (編集) テンプレート:Ifempty (編集) テンプレート:Ill2 (編集) テンプレート:Kotobank (編集) テンプレート:Lang-de-short (編集) テンプレート:Lang-en (編集) テンプレート:Lang-en-short (編集) テンプレート:Lang-fr-short (編集) テンプレート:Lang-grc-short (編集) テンプレート:Lang-la-short (編集) テンプレート:Main (編集) テンプレート:Normdaten (編集) テンプレート:PDFlink (編集) テンプレート:Polytonic (編集) テンプレート:Reflist (編集) テンプレート:Rellink (編集) テンプレート:See/core (編集) テンプレート:See also (編集) テンプレート:Sfn (編集) テンプレート:Sub (編集) テンプレート:Sup (編集) テンプレート:Val (編集) テンプレート:Wiktionary (編集) テンプレート:いつ (編集) テンプレート:二原子分子 (編集) テンプレート:仮リンク (編集) テンプレート:元素周期表 (編集) テンプレート:要出典 (編集) テンプレート:酸素の化合物 (編集) テンプレート:酸素の同素体 (編集) モジュール:Arguments (編集) モジュール:If empty (編集) モジュール:IsValidPageName (編集) モジュール:See/core (編集)