新世界秩序


概要[編集]

「新世界秩序(しんせかいちつじょ)」は、国際政治や経済における秩序の再編を指す言葉である。歴史上は第一次世界大戦後や第二次世界大戦後、さらには冷戦終結後など、世界的な秩序が大きく変化した局面で用いられてきた。

一方で、この語は20世紀後半以降、特にアメリカを中心とする一部の政治家の発言をきっかけに、陰謀論のキーワードとしても広まった。陰謀論では、秘密結社や国際金融資本、あるいは超国家的な支配層が世界を一元的に管理するという物語が付与されることが多い。

このように、「新世界秩序」は実際の外交・政治史上の概念と、陰謀論的想像とが混同されやすい用語となっている。

用語の起源[編集]

歴史的用例[編集]

「新世界秩序」という表現は19世紀の思想家や国際政治家の著作にも見られるが、当時は単に新しい国際体制や秩序を意味する中立的な言葉であった。

第一次世界大戦後、アメリカ大統領ウッドロウ・ウィルソンは民族自決と国際連盟の設立を掲げ、新しい世界秩序の構築を唱えた。これは後の用法の原型とされる。

戦後期の使用[編集]

第二次世界大戦後、国際連合の設立や米ソ冷戦体制の確立は「戦後の新しい世界秩序」と呼ばれることがあった。

特にアメリカ大統領ジョージ・H・W・ブッシュが1990年の湾岸危機時に演説で「a new world order(新世界秩序)」という言葉を使ったことで、冷戦後の国際秩序を表す公式用語として世界的に注目された。

陰謀論での用例[編集]

ブッシュの演説以降、この言葉はアメリカ国内の右派的・極端主義的な運動や、オカルト・終末論と結びつき、「世界政府が人類を支配する計画」を示す暗号と解釈されるようになった。

特に1990年代以降、インターネット掲示板を通じてこの種の主張は国際的に拡散し、日本語圏でも「NWO(New World Order)」として紹介された。

歴史[編集]

第一次世界大戦から第二次世界大戦まで[編集]

第一次世界大戦後のヴェルサイユ体制は、旧来の帝国主義秩序を終わらせると同時に、民族自決と国際協調を基盤とした新しい世界秩序を標榜した。しかし、この体制は経済恐慌やファシズムの台頭により崩壊し、第二次世界大戦が勃発した。

第二次世界大戦後は、国際連合の創設と米ソ両大国による冷戦構造が新たな世界秩序を形成した。

冷戦期[編集]

冷戦期の世界は、アメリカ主導の西側ブロックとソ連主導の東側ブロックによって二極化され、国際秩序は事実上この二大陣営の対立のもとに維持された。

この時期には、「新世界秩序」という表現は主に平和運動や第三世界の独立運動のスローガンとして使われることが多かった。

冷戦終結後の国際秩序[編集]

1989年のベルリンの壁崩壊とソ連解体を経て、冷戦が終結すると、アメリカは単独超大国として国際社会を主導する立場に立った。

1990年、ジョージ・H・W・ブッシュ大統領は湾岸危機への対応をめぐる演説で「冷戦後の新しい世界秩序」を宣言し、国際連合と協調した多国間主義を強調した。

この時期の「新世界秩序」は、国連を中心とする集団安全保障体制の強化、自由市場経済の拡大、民主主義の普及といった理念と結びついていた。

陰謀論における「新世界秩序」[編集]

アメリカの政治言説[編集]

アメリカ国内では、連邦政府や国際機関に対する不信感を背景に、「新世界秩序」が国家主権の喪失や市民の自由の制限と結びつけて語られるようになった。

1990年代には極右的民兵組織や陰謀論作家がこの語を多用し、反連邦政府運動のスローガンとして広まった。

オカルト・宗教的解釈[編集]

キリスト教原理主義の一部では、「新世界秩序」をヨハネ黙示録に登場する「獣の支配」に結びつける解釈が現れた。これにより、政治的用語だったはずの概念が終末思想やオカルト的想像力と混ざり合った。

フリーメイソン、イルミナティ、ロスチャイルド家などの名がしばしば関連づけられたが、いずれも根拠のない主張である。

インターネットとSNSでの拡散[編集]

2000年代以降、インターネット掲示板やYouTubeなどを通じて、この語は国際的な陰謀論の象徴として拡散した。

特に9.11同時多発テロ以降、アメリカ政府の対テロ戦争や監視社会化に対する反発と結びつき、SNS上で世界規模の陰謀が語られるようになった。

日本における受容と変遷[編集]

日本では1990年代に翻訳書やオカルト雑誌を通じて「新世界秩序=世界政府陰謀論」が紹介され、インターネット普及期には掲示板やブログで拡散した。

2020年代にはSNSでの誤情報の拡散やパンデミック時の陰謀論の一部として再び注目を集めることがあった。

評価と批判[編集]

学術的見解[編集]

歴史学や政治学の専門家は、「新世界秩序」を国際関係史上の変動を指す中立的な用語として扱い、陰謀論的解釈には根拠がないと指摘している。

メディアによる検証[編集]

国際的な主要メディアは、陰謀論として流布される新世界秩序の物語をたびたび検証し、誤情報であることを報じてきた。

関連項目[編集]

  • 国際連合
  • 冷戦
  • 世界政府
  • 陰謀論
  • フリーメイソン
  • イルミナティ

リンク[編集]

国際連合公式サイト ジョージ・H・W・ブッシュ大統領図書館 Snopes(ファクトチェックサイト)

余談[編集]

  • プロレス団体WCWには1990年代後半、「nWo(New World Order)」という悪役ユニットが存在し、陰謀論的な用語をパロディ化したものとして有名である。
  • 日本のサブカルチャーにおいても、漫画やゲームの組織名などに「新世界秩序」が引用される例がある。
  • インターネット上ではしばしばジョークとして使われ、「猫が世界を支配する新世界秩序」などのミームが生まれている。