ドラえもん

概要[編集]

ドラえもんは、藤子・F・不二雄(藤本弘)による日本の国民的SF漫画、およびそれを原作としたアニメ・映画作品。1969年に小学館の学年誌で連載が始まり、22世紀の未来からやってきたネコ型ロボット「ドラえもん」が、ダメな小学生・野比のび太の元に居候し、四次元ポケットから出す「ひみつ道具」で彼を助ける……という設定はもはや説明不要のレベルである。

日本人なら知らない人はまずいないと言ってよく、子どもから大人まで何世代にもわたって愛され続けている怪物コンテンツである。連載開始から半世紀以上が経った今もテレビアニメが放送され、毎年春には映画が公開される。「国民的アニメ」という言葉がこれほど似合う作品もそうそうない。

ちなみにドラえもんは「ネコ型ロボット」なのだが、耳をネズミにかじられたせいでネコ耳がなく、しかもネズミが大の苦手という、ロボットらしからぬ弱点持ちらしい。設定を知るほど味わい深くなるキャラクターである。

連載と歴史[編集]

『ドラえもん』の連載は1969年12月(1970年1月号)、小学館の学年誌『よいこ』『幼稚園』『小学一年生』などで一斉にスタートした。学年ごとに別の話を載せるという独特のスタイルで、読者である子どもの成長に合わせて作品が並走する形だった。当初はそれほど目立つ存在ではなかったが、口コミとともに人気が広がっていったらしい。

1973年には日本テレビ系で最初のテレビアニメ化が行われたものの、わずか半年で終了。いわゆる「日テレ版ドラえもん」は今や幻の作品として語り草になっている。本格的なブレイクは1979年、テレビ朝日系で始まった2作目のアニメからで、ここから国民的コンテンツへの道を一気に駆け上がっていった。

原作者の藤子・F・不二雄は1996年に逝去したが、その後も「藤子プロ」のもとで作品は大切に受け継がれている。コミックスは「てんとう虫コミックス」全45巻が定番だが、各種の大全集や傑作選も刊行され、累計発行部数は途方もない数字に達している。

基本設定とあらすじ[編集]

物語の発端は、勉強もスポーツもダメで何をやっても上手くいかない小学生・野比のび太のもとに、彼の子孫であるセワシくんが22世紀から一体のネコ型ロボットを送り込むところから始まる。それがドラえもんである。このままではのび太の将来が悲惨なものになり、子孫が苦労し続けるため、過去を変えてのび太をまっとうな大人にしようというのがミッションらしい。

ドラえもんはのび太の家に居候し、彼が困るたびにお腹の四次元ポケットからさまざまな「ひみつ道具」を取り出して助ける。ところがのび太は道具を悪用したり調子に乗ったりして、最後はたいてい痛い目を見る……という一話完結のパターンが基本である。この「便利な道具に頼りすぎるとロクなことにならない」という教訓めいたオチが、子ども向けでありながら妙に味わい深い。

舞台は東京近郊の住宅街で、のび太の家、空き地(土管が積まれているあの空き地)、裏山などおなじみのロケーションが繰り返し登場する。日常の中に少しだけSFが混ざり込む、絶妙なバランスが魅力である。

主な登場人物[編集]

ドラえもん:本作の主人公。22世紀生まれのネコ型ロボットで、のび太の世話係。明るくお人好しだが、ネズミを見ると我を忘れて大暴れするほどの極度のネズミ嫌い。どら焼きには目がなく、感情も豊かでよく泣きよく怒る。ロボットらしからぬ人間くささが魅力である。

野比のび太:本作のもう一人の主人公。気が弱く怠け者で、勉強も運動も苦手という「ダメな小学生」の代名詞。射撃とあやとりだけは天才的という謎の特技を持つ。優しさと情の深さがあり、ここぞという場面では男を見せる。

源静香(しずか):のび太の同級生でヒロイン。優しく成績優秀で、将来はのび太と結婚することが未来から確定している。お風呂好きとしても有名。

剛田武(ジャイアン):ガキ大将。乱暴者だが仲間思いの一面もあり、映画版では頼れる兄貴分に豹変する「映画版ジャイアン」現象でおなじみ。歌が壊滅的に下手という設定も鉄板。

骨川スネ夫:お金持ちのいけすかない少年。自慢話とゴマすりが得意で、ジャイアンの腰巾着的ポジション。

ひみつ道具[編集]

本作の最大の魅力は、なんといってもドラえもんが四次元ポケットから取り出す「ひみつ道具」である。その数は作中に登場しただけでも膨大で、子どもの夢を形にしたようなアイデアの宝庫だ。

特に有名なのが、どこへでも一瞬で行ける「どこでもドア」、空を自由に飛べる「タケコプター」、過去や未来へ移動できる「タイムマシン」、食べると何でも暗記できる「アンキパン」、相手の言葉が何語でも通じる「ほんやくコンニャク」あたりだろう。どれも「あったらいいな」を完璧に突いており、大人になっても欲しくなる道具ばかりである。

一方で「悪魔のパスポート」「どくさいスイッチ」のように、使い方を誤ると恐ろしい結果を招く道具も多い。こうした道具を巡るエピソードはしばしば風刺やブラックユーモアを帯びており、子ども向けの枠を超えた深さを見せる。藤子・F・不二雄の「すこし・ふしぎ(SF)」の真骨頂と言えるだろう。

なお、ひみつ道具は基本的にのび太がうまく使いこなせず、調子に乗って自滅するのがお約束。便利すぎる道具は人を堕落させる、という教訓がさりげなく効いている。

テレビアニメ[編集]

テレビアニメは大きく分けて、1973年の日本テレビ版、1979年から続いたテレビ朝日版(大山のぶ代がドラえもんを演じた、いわゆる「大山版」)、そして2005年にリニューアルされた「水田わさび版」の3つの時代に分けられる。

特に大山のぶ代の声は1979年から26年もの長きにわたって親しまれ、多くの世代にとって「ドラえもんの声=大山のぶ代」という刷り込みがある。2005年4月のリニューアルでは声優・スタッフが一新され、当初こそ違和感を訴える声もあったが、水田わさび以下の新キャストもすっかり定着し、今では新たな世代のスタンダードになっている。

放送は長年テレビ朝日系の金曜夕方枠(かつては土曜)の定番で、サザエさんと並ぶ「国民的アニメ」の代表格。安定した人気を誇り、世代を超えて茶の間に流れ続けている。

映画シリーズ[編集]

『ドラえもん』を語るうえで外せないのが、毎年春に公開される長編映画シリーズである。1980年の『のび太の恐竜』を皮切りに、ほぼ毎年新作が作られ続けている、日本を代表する長寿アニメ映画シリーズだ。

映画版の特徴は、ふだんはドジでダメなのび太が冒険の中で勇気を見せ、ジャイアンが頼れる兄貴に豹変し、いつものメンバーが力を合わせて大冒険を繰り広げるという熱い展開にある。『のび太の魔界大冒険』『のび太の海底鬼岩城』『のび太とブリキの迷宮』など、子ども心に強烈な印象を残した名作が数多い。

近年はCGや新解釈を取り入れたリメイク版や完全新作が交互に公開され、『STAND BY ME ドラえもん』のようなフル3DCG作品も大ヒットを記録した。「子どもの頃に見た映画を、今度は自分の子どもと見る」という親子二世代・三世代での鑑賞が定番になっており、毎春の風物詩として完全に定着している。泣ける映画としてSNSで話題になるのも恒例だ。

評価と影響[編集]

『ドラえもん』は単なる人気漫画にとどまらず、日本の文化そのものに深く根を下ろした存在である。「どこでもドア」「タケコプター」といったひみつ道具の名前は、技術やサービスを語る際の比喩として日常会話やニュースでも当たり前のように使われる。新しい翻訳アプリが出れば「ほんやくコンニャクだ」と言われるのがお約束だ。

2002年にはアメリカの雑誌『TIME ASIA』で「アジアの英雄」に選ばれ、2008年には外務省から「アニメ文化大使」に任命された。日本のソフトパワー、いわゆるクールジャパンの象徴的キャラクターとして、国を代表する顔のひとつになっている。

海外でもアジアを中心に絶大な人気を誇り、特に東南アジアでは国民的アニメと言ってよいほど浸透している。一方で、長年「日本でしか本格展開していなかった」アメリカでも配信などを通じて知名度が広がりつつある。

子ども向けの娯楽でありながら、友情・努力・優しさといった普遍的なテーマを押し付けがましくなく描き続けてきたことが、半世紀以上も愛され続ける最大の理由だろう。藤子・F・不二雄が遺した最大の財産であり、日本の宝と言っても過言ではない。

関連キャラクターとスピンオフ[編集]

ドラえもんには仲間や派生キャラクターも多い。妹分の「ドラミちゃん」は黄色いリボンがトレードマークで、兄よりも高性能かつしっかり者という、なんとも世知辛い設定。困ったドラえもんを助けにやってくる頼れる存在だ。

また「ザ☆ドラえもんズ」という、世界各国出身のネコ型ロボット集団のスピンオフも展開され、映画やゲームで人気を博した。王ドラ、ドラ・ザ・キッド、ドラニコフなど個性豊かな面々がそろっている。

ゲーム作品も数多く、ファミコン時代から現在のSwitchに至るまで、アクション・パズル・育成など様々なジャンルで展開されている。『のび太の牧場物語』のように他の人気シリーズとコラボした作品もヒットした。

さらに、原作者・藤子・F・不二雄の故郷である富山県高岡市や、神奈川県川崎市の「藤子・F・不二雄ミュージアム」など、聖地巡礼スポットも各地に存在する。世代を超えたファンが足を運ぶ、まさに国民的キャラクターならではの広がりである。

炎上とバズ[編集]

  • 声優交代(2005年):第1期の大山のぶ代から水田わさびへ、メインキャスト一新となった2005年のリニューアルは賛否両論で大いに話題になった。「ドラえもんの声が変わるなんて」と当初は戸惑う声も多かったが、今ではすっかり定着している。
  • 都市伝説の定番化:幻の最終回や「のび太植物人間説」など、ファンの間で囁かれる都市伝説が定期的にネットでバズる。いずれも公式とは無関係のファン創作だが、その浸透ぶりは作品の影響力の裏返しと言える。
  • ジャイアンの名言改変:「お前のものは俺のもの、俺のものも俺のもの」はネットミームの定番。理不尽の代名詞としてあらゆる場面で引用されまくっている。
  • 映画の「泣ける」評価:近年は「大人が泣ける映画」としてSNSで毎春バズる。子ども向けと侮るなかれ、というやつである。

余談[編集]

  • ドラえもんの体重は129.3kg、身長129.3cm、誕生日は2112年9月3日……と、やたら「129.3」にこだわった設定が有名。
  • 大好物のどら焼きは、もともと別の食べ物になる予定だったとも言われる。どら焼きで本当に良かった。
  • のび太の0点答案や昼寝の速さ(0.93秒で寝られる)はある意味才能と作中で言及されることがある。
  • アメリカ版では設定がローカライズされ、どら焼きがピザになるなどの変更が加えられたらしい。
  • 「ドラミちゃん」はドラえもんの妹分だが、性能はドラえもんより上という説が根強い。
  • 主題歌「ドラえもんのうた」は世代ごとに歌い継がれ、誰もがサビを口ずさめる。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

  • ドラえもんチャンネル(小学館公式)