概要[編集]
『ドカベン』は、水島新司による日本の野球漫画。『週刊少年チャンピオン』で1972年から1981年まで連載され、単行本は全48巻。後の続編シリーズを含めると壮大な大河野球漫画となり、水島新司の代表作にして日本野球漫画の金字塔である。
体は大きいが心優しい捕手・山田太郎を主人公に、明訓高校野球部の活躍を描いた高校野球漫画。リアルな野球描写と、個性豊かなキャラクター、そして「実際にありそうでなさそうな」絶妙なプレーの数々で、多くの読者を魅了した。
「ドカベン」とは主人公・山田太郎のあだ名で、大きなドカ弁当を持ち歩いていたことに由来する。本作は野球漫画でありながら、序盤は柔道漫画として始まるという異色のスタートでも知られている。連載期間・続編を含めた長さは野球漫画史上でも屈指で、まさに水島ワールドの中心的作品である。
あらすじ[編集]
山田太郎は、体が大きく力持ちだが、心優しい少年。当初は柔道で才能を発揮していたが、やがてその素質を見込まれ、野球の世界へと足を踏み入れる。神奈川県の名門・明訓高校に入学した山田は、捕手としてチームの要となる。
明訓高校には、豪快な打撃の岩鬼正美、秀才肌の殿馬一人、エース里中智など、個性的すぎる仲間たちが集結する。彼らとともに、山田は甲子園を目指して激戦を勝ち抜いていく。ライバル校にもまた魅力的な選手が揃い、彼らとの対決を通じて山田たちは成長していく。
主な登場人物[編集]
山田太郎は本作の主人公。「ドカベン」のあだ名で親しまれる名捕手。優れた打撃と、頭脳的なリードでチームを支える。心優しく誠実な人柄で、仲間からの信頼も厚い。
岩鬼正美は明訓高校の四番打者。葉っぱをくわえ、悪球打ちを得意とする豪快な男。ヒロイン・夏子はんに一途な恋心を抱く、憎めないキャラクター。
殿馬一人は天才肌の二塁手。ピアノで鍛えた指先を活かした「秘打」の数々を繰り出す変わり者。里中智は小柄ながら抜群のコントロールを誇る明訓のエースピッチャー。ライバル校の不知火守や土井垣将といった選手たちも人気が高い。
リアルな野球描写[編集]
水島新司の野球漫画の真骨頂は、その圧倒的にリアルな野球描写にある。本作では、実際の野球のルールや戦術を忠実に取り入れつつ、「ありそうでなかった」プレーや戦法を次々と生み出した。特に有名なのが「ルールブックの盲点の1点」のエピソードで、野球規則を駆使した極めて珍しい得点シーンは、実際の野球ファンをも唸らせた。
水島新司と「水島ワールド」[編集]
作者・水島新司は、本作以外にも『あぶさん』『野球狂の詩』『大甲子園』など、数多くの野球漫画を手がけた「野球漫画の神様」とも称される存在である。彼の作品群は登場人物が作品の枠を超えて共演する「水島ワールド」を形成しており、本作のキャラクターも他作品に登場することがある。
アニメとメディア展開[編集]
テレビアニメは1976年から1979年にかけて放送され、全163話という長編シリーズとなった。山田太郎をはじめとする個性的なキャラクターたちが画面の中で生き生きと動き、原作とともに高い人気を博した。主題歌もまた世代を象徴する一曲として、今なお多くの人に親しまれている。その後も続編シリーズのアニメ化や、ゲーム化など、多方面でメディア展開が行われた。連載開始から半世紀以上が経った現在も、『ドカベン』は日本野球漫画の原点のひとつとして語り継がれている。
炎上とバズ[編集]
「ルールブックの盲点の1点」のエピソードは、あまりに巧妙な野球規則の活用として、連載当時から大きな話題となり、今でも野球ファンの間で語り草となっている。岩鬼の「悪球打ち」や殿馬の「秘打」など、現実離れしているようでギリギリ成立しそうな技の数々は、ファンの間でたびたびネタとして盛り上がる定番の話題である。作者・水島新司の出身地である新潟には、ドカベンのキャラクター像が設置されており、聖地として親しまれている。
余談[編集]
タイトル「ドカベン」は主人公の大きな弁当箱に由来するあだ名である。
本作は野球漫画でありながら、連載開始当初は柔道漫画として始まったという珍しい経緯を持つ。
水島新司は2022年に逝去したが、その作品群は今も多くのファンに愛されている。
明訓高校は架空の高校だが、あまりのリアルさに実在すると思った読者もいたという。
続編として『大甲子園』『ドカベン プロ野球編』『ドカベン スーパースターズ編』などが描かれ、山田太郎の野球人生が長く追われた。
岩鬼の愛する「夏子はん」は、本作の数少ない恋愛要素として人気がある。